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掃除をしましょう 5
「私はこちらをやっていきますので、坊っちゃまは、そちらからお願いします」
「……ああ」
側仕えからやや離れて座ったのと同時にそう言いながら、手早く玩具を拭いては、空いている場所に置いていった。
それをチラ見し、改めて自身の前に広がる光景を見やる。
十年近くだろうか。誰にも手をつけさせず、見ないふりをしてきたこれらを、今から自分の手で綺麗にしていくのだ。
皮肉だな。
鼻で嗤い、眼前にあった超合金のロボットを手に取る。
幼稚園辺りから、テレビで特撮ヒーローが始まった。
爆発的に大人気となったそれに登場する合体ロボは、高価であり、なかなか手に入れられる子どもは少なかった。
そういったこともあり、同年代に自慢が出来ると思い至り、大して好きでもなかったロボットを、またもや祖父に買ってもらった。
『私の子どもの頃は、ロボットも、ましてやテレビもなかったからな。眞ノ助が羨ましいよ』
『だったら、おじーちゃん。いっしょにあそぶ?』
『一緒に遊んでくれるのか。嬉しいなぁ』
「──坊っちゃまが持っていらっしゃるそれは、子ども達に大人気であった特撮のロボットでございますか」
「……あ、ああ。そうだが」
記憶に意識を追いやっていたから、側仕えが急に距離を縮めてきたことに、内心驚く。
そんな眞ノ助のことは露知らず、側仕えは話し続けた。
「そうなのですか。噂では聞いたことがあったのですが……。私、初めて見ました。思っていたよりも、しっかりとした作りなのですね」
初めて?
まじまじと見ている側仕えの発言に、違和感を覚えた。
側仕えというものは、教養がないと務まらないと思っていた。から、良い所の出かと勝手ながらに思い込んでいたのだが、違っていたのか。
「お前は、見たことがないのか?」
ふと、側仕えの顔を盗み見た時、瞬きするほどの一瞬であったが、はっと息を呑んだかのような表情をした。
何故、そのような表情を、とこちらも目を見張っていたところ、側仕えが答えた。
「……私の、子どもの頃にはなかったものですから」
「子どもの頃……。お前は、何歳なんだ」
自分より大人びているような顔立ちであるが、いくらか幼くとも見える。
童顔というやつなのだろうか。
すると、側仕えは悪戯な笑みを浮かべた。
「いくつぐらいに見えます?」
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