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掃除をしましょう 6

眞ノ助は、ムッとした。 「くどい。何故、すぐに教えてくれないんだ」 「そういうものは、すぐに教えては面白くないのですよ」 「いいじゃないか。別に僕は、面白くともなんともないのだから」 「いえ、坊っちゃま。小さなことでも、興味があったから、私にそのようなことを質問なされたのでしょう? そうでなければ、聞き流していたはずです」 まただ。図星であるから、何も言えなくなってしまう。 けれども、どうしても言い返したかった眞ノ助は、どうにかこうにか頭を巡らせたのち、不意に思ったことを口にした。 「数日前とは打って変わって、僕に物言いするようになったな」 「それはいつまでも、坊っちゃまのご機嫌を伺っているわけにはいけませんから」 「今までの側仕えは、僕の顔色を伺っていたけどな」 人をまるで、得体の知れない怪物か幽霊かと見間違えているかのような怯え方に、心底腹を立てていたものだ。 ところが、その中でも、子どものくせに生意気なと思ったのだろう。酷い仕打ちをする者もいた。 そのことは、記憶に蓋をしたいほど思い出したくもないし、された箇所がじくじく痛んだような気がした。 「坊っちゃま? ご気分が優れないのですか?」 心配そうに差し出してきた手を軽く払い除けた。 「別に大丈夫だ。それよりも、昼食の時間だ。着替え直さないといけない」 三角巾を外し、埃が付いてしまった服を脱ごうとする眞ノ助に、「お手伝いします」と新しい服を取っていき、着替え直してもらったタイミングで、壁時計が十二時を告げる音を鳴らした。 「坊っちゃま。ちょうど良い時間になりました。参りましょう」 「……ああ」 側仕えを先頭に、片付け途中の部屋を後にした。 「──先ほどの話ですが、いくつに見えます?」 「まだその話をするのか」 「お食事する場所へ行くまでの、ちょっとした暇潰しです。少々お付き合いくださいませ」 急に立ち止まったかと言うと、振り返り、にこっと笑いかけるものだから、仕方なしに付き合うことにした。 それは、あの時の『金平糖の君』のことを思い出したからではない。 「……27、ぐらいか?」 少し歩いた後、ふっと頭の中で浮かんだ数字を言ってみると、また側仕えは振り返って、微笑んだ。 「そうと思えば、そうですよ」

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