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掃除をしましょう 11

「とても可愛い可愛いと仰ってましたが、本当に可愛らしい」 「祖父との思い出話を聞く気がないのなら、出て行ってくれないか?」 「これは失礼しました。是非ともお聞かせくださいますよう、お願い致します」 クスクスと上品に笑う側仕えに魅入ってしまいそうになるのを堪えつつも、「眠くなったら、すぐに終わらせるからな」とそっぽを向いて、そう前置きをし、 「それはな、僕が幼稚園くらいの時に始まった特撮のロボットだったようだ。同年代に見せつけてやりたくなって買っただけのそれは、今回もすぐに飽きるかと思っていた。だが、祖父の子どもの頃にはなかったという発言に、僕はおもむろに一緒に遊ぶことを提案した」 曖昧な発言をした通り、テレビを観たことがなかったものだから、そのロボットがどういうことをするのか分からず、適当に床に滑らせてみたり、飛行機に見立てて飛ばしてみたりしてみせた。 『ほぅ、そういう動きをするのか』 『ううん。ちがうよ。ぼく、みたことがないから、てきとーにやってるだけ』 『なんだ。観たことがなかったのか。なら、今度私と一緒に観てみようか』 「──祖父に誘われたことが嬉しくて、早速観てみたんだが、殴り合ったりしたことがなかったものだから、最初はなんだか怖く感じて、あまり観る気にはならなかった。けど、祖父が感心して観ているから、仕方なしに観続けていたら、その姿がカッコよく感じられたみたいだ。魅入ってしまっていた」 その時の興奮が忘れられず、新聞紙を丸め、武器と見立て、祖父とチャンバラごっこをしたりした。 そうだ。そのような遊びをしたことがあった。同年代の子どもと上手く馴染めず、落ち込んでいた時、祖父がそのような遊びを提案してくれたのだ。 楽しかったんだ。 見つめていた先が歪んでいたことで、涙が溢れているんだと気づくが、拭くことはせず、そのまま頬に伝い、布団を濡らしていく。 途中で言葉が切れ、小さく嗚咽を漏らす眞ノ助に不思議に思ったのだろう、顔を覗き込んでくる気配を感じた。 それでもとめどなく溢れる涙が止まらず、流し続けていると、そっと頭に手が乗せられる。 何のつもりだ、と手を振り払いたくなったが、実際はその優しい温もりを感じたくて、されるがままとなった。

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