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掃除をしましょう 14

とても恥ずかしいことをされた。 騒がしい教室の中、席で勉強をしながらふっと、朝のことを思い出してしまい、頬が熱くなるのを感じた。 今思うと、何故身を許してしまう行為をしてしまったのだろうと、自分がしてしまったことなのに、自分のこと分からず、困惑していた。 何かを信仰しているわけでもないが、あの微笑みは思わず手を合わせてしまいそうになるものだから、結果としてそうなってしまったわけで。 あまり認めたくないが、何よりも祖父しか知らず、忘れてしまっていたぬくもりを感じることが出来たから、少しでも許しても良かったのではないかと思う。 ──ほんの少しでもよいので、私のことを頼ってください。私はあなたの側仕えなのですから。 「佐ノ内君、おはよう!」 掛けられるはずがない急な挨拶に、肩が思いきり上がるくらい驚愕する。 「あ、ごめんね。勉強中だったんだ。急に驚かせてしまったね」 「…………」 身を屈めて、こちらの様子を窺っている相手に、勉強している最中だから邪魔するなと無言の圧をかけていた。 この相手は、同じ学級の者であるらしい。表面上は金に余裕があり、幼い頃からきちんとした教養がされている男子校であるが、この者はそれらに当てはまらない、しかし、特待生と呼ばれる者であった。 恐らく、一年にはいなかったと思うのは、こうして無視をし続けている合間の、周りでそれぞれの友人と話していた同じ学級の者たちが、「特待生があの根暗に話しかけてる」「誰に対しても明るいよな。僕なら話しかけないね。家柄が違うから」と眞ノ助のことを悪く言いつつも、この特待生と呼ばれている者の話をよくしていたからだ。 いや、何よりも、誰も話しかけてこなかったのに、この相手が話しかけてきたからだ。 事の発端は、今のように一人で時間潰しにと勉強をしている最中に、話しかけてきたことから始まる。 最初、自分に話しかけてくる人が思わなく、かなりの変わり者だと思い、無視し続けたが、休み時間、移動教室の合間にも構わず話しかけてくるものだから、眠たい頭に響き、腹を立たせる要因になったから、ある日ついに口に出した。 そしたら、不釣り合いな笑顔を向けられた。 『やっと、話しかけてくれた』と。

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