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掃除をしましょう 15
この者に対しても、側仕えと同じくらい意味が分からないなと思いつつも、「鬱陶しいから、どっかに行ってくれ」と突っぱねようとした時だ。
「あ、佐ノ内君。顔赤くない? もしかして、熱があるの?」
そう言って、額を触ろうとしてこちらに手を差し伸べてくる。
──ああ、良かったです。目元が目立つぐらい腫れていなくて。
微笑み、目元を触れてきた側仕えの姿が重なる。
「触るなっ!」
バシッ。
手を思いきり叩いた。
「……あっ」
触れた箇所が、あとからじんと痛み出した時、どちらが発した分からない声が上がる。
拍子に相手の顔を盗み見た時、ハッとする。
皺ができるほど眉を寄せ、傷ついた顔をしていた。
自分からしてきたクセに、どうしてそんな表情をするのか。
「………」
苛立ちが募っていた眞ノ助であったが、あれほど騒がしかった教室内の急な静まりように、そして、一斉に視線が自分らに注がれていたことに気づく。
その視線に、あの顔を振り切るように立ち上がり、教室から飛び出していった。
その時に、あの特待生が、廊下ですれ違った担任が何か言っていたが、眞ノ助の耳には一切届かなかった。
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