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掃除をしましょう 16

「──坊っちゃま、何かありましたか」 迎えの車に乗り、少しした後、どこか心配そうな声音で尋ねてくる。 何かといえば──。 あれから、出席を確認する時間を告げる鐘が鳴ったものだから、しょうがなく教室に戻った。 先ほどの間抜けなことをしたこともあり、入った途端、担任の「何をしている。早く着席しなさい」と言う声と共に、ちらほらくすくすと笑う声が聞こえた。 特に謝罪をすることもなく、聞こえてないかのように振る舞い、着席する。 そんなこともいつもの日常の一部であるから、もはやどうでもいい。その後の特待生が、朝の態度とは打って変わっての、人の顔色ばかりを窺い、何かを言おうと口を開いては閉じてを繰り返しているのだ。 いつぞやかの側仕えたちのようだ。 しかも、その特待生に限ってはそれを視界内でしてくるものだから、鬱陶しくて仕方ない。 『──僕に構わないでくれないか』 放課後。下駄箱で靴に履き替え、一歩踏み出しかけた足で振り返り、言い放った。 その際に、驚く目と合った。これを機にと思ったのか、特待生はようやく口を開く。 『あ、朝のこと! 君の気分を害してしまったね。本当にごめん』 土下座をしそうな勢いで頭を垂れる。 そのことに対して、鼻で嗤った。 『一日中人の周りにまとわりついていて、今さら謝罪しに来るんだな』 『……そのことに対しても、ごめん。なんて言えばいいのか、どうしたら君に許してもらえるかと考えていたら、上手く口に出来なくて……』 『それはご苦労なこった。で、この僕がそれで許すとでも?』 『え? ……っと、そうとは思わない、けど……』 『どんなに謝罪の口をしても、僕は許さない。許すとしたら、僕に一切話しかけないことだ』 『あっ……!』 これで話は終わりだと言わんばかりに踵を返す眞ノ助に、呼び止めているような声が聞こえたが、少しも振り返ることもなく、待っている迎えの車へと赴いた。 「──坊っちゃま?」 深く考え込んでいたらしい、声を掛けられて一気に現実に戻った。 「やはり、学校で何かありましたか」 「いつもと変わらない」 「……そうですか。……そうならば、よろしいのですが……」 「なんだ。お前からして、僕の様子がおかしいとでも言うのか?」 「いえ、そんなわけがありません。坊っちゃまがそう仰るのでしたら、私が出過ぎたことを言うのは、お門違いかと思われます。何もございません」

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