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掃除をしましょう 20

一日の終わりがけ、布団を敷いている側仕えを背に、眞ノ助は玩具を手に取っていた。 「坊っちゃまと一緒に掃除する話でしたが、先にやっておいて良かったです」 「本当に。あの話はなんだったんだ」 「思い立ったら吉ですよ、坊っちゃま。坊っちゃまの性格上、いつまでも続かないと判断したからでもあります」 「そのことも祖父から聞いていたのか?」 「ええ、そうですね」 「……あぁ、そう」 眞ノ助にとっては知らなかった人物に、祖父からこと細かに聞いていたという事実がとてつもなく恥ずかしい。知られたくないことまでも知っていそうで、それが弱みを握られているようで、心底嫌な気分であった。 そこでふと、眞ノ助はある疑問が湧いてくる。 そのようなことまで話すだなんての関係ではないのではと思えてくる。 そうではなかったら……友人? 「なぁ、こっちが嫌って、無視しているというのに、それでも話しかけてくる奴ってどう思う」 「いきなりどうされたのです、藪から棒に」 「いや、お前と祖父との関係が、ちょっとした知り合いだとは思えなくてな。そうじゃなければ、どういう関係と言うのかと」 振り向きざま、布団のそばで正座をしていた側仕えに尋ねてみる。 その疑問は、学校で起こった出来事をも踏まえてのことだった。 あの特待生が自分のことをどう思っているのか知らないが、この側仕えがかつて好かれていた人がいたのにも関わらず応じなかった点が、関係性が違えども、似ていた部分があるからだ。 すると、視線を外した側仕えがどこか考える仕草を見せる。 少しの間。待ちきれなくなった眞ノ助は、催促の声を掛けようとした時、側仕えが顔を上げた。 「先ほどのこと、忘れてくださいと申しましたが、言ってしまったことはすぐに忘れられるはずがありませんよね」 ふと、普段の変わらない笑みを見せるが、眞ノ助の目にはどこか寂しげに映り、胸がチクリと痛んだ。 「私としては、ちょっとした知り合いにしか過ぎませんが、坊っちゃまのおじい様──清志郎様は、もしかしたら違うのかもしれませんね」 視線を逸らし、遠くを見つめているような眼差しを向けていた。 「歳の離れた友人、とも言えますし、孫と言うのは違うかもしれませんが、それに近い関係だったのかと窺えます。実際によく可愛がってもらえましたから」

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