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掃除をしましょう 21

最後辺りはこちらを、いつもと同じような微笑みで返した。 いきなりのその表情に、今度は眞ノ助が視線を逸らした。が、その言葉に違和感を覚えた。 よく可愛がってもらったを、強調するかのように言っていたのだ。 孫に近いような関係性とも言っていたことから、眞ノ助と同じく可愛がってもらったのだろう。けれども、唯一可愛がってくれた人が、ぽっと出の者と同じくらいというのが、癪に障る。 「……僕の方が、可愛がってもらっていたし」 「ふふっ、ふふ。分かっておりますよ。何せ、素晴らしき佐ノ内家の血を受け継いでいる先代の次期当主様ですから。私のような、足元も及ばない者が孫のように接してくださるだなんて、あまりにも恐れ多いです」 褒められたこともない家柄に、違和感を覚えた。 「素晴らしいとは思わないのだが」 「いいえ、坊っちゃま。戦後の生産が回復する最中、いち早く見出した、その内の一つの織物販売の実績が、こうして大変素晴らしい家柄を築き上げたのですよ。誇りに思ってください」 「誇りに……」 むず痒い言葉だと感じた。それは褒められて嬉しいと思っているからなのだろう。 不思議な感覚だ。 戦後のどさぐさに紛れ、だまくらかして、さほど豊かな家柄ではなかったのに、たまたま見出した産業のおかけで一代で築き上げた成金だと悪く言われ続けたのが言葉を言い換えるだけで、こんなにも心情が変わるだなんて。 こそばゆくて、玩具を意味なく触った。 「時代が時代でしたから、心に余裕がなかったのでしょう。そういう人達はこれから先も接していくこととなります。ですが、それでも、家柄関係なく接してくださるご学友がいらっしゃるでしょう。そのご学友を大切になさってください。きっと良い関係になられると思いますよ」 「……そういうのを築いたことがないから、どう接したらいいのか分からないが」 「どんな人でも、まずはあいさつからですよ。そしたら、自然と話せるようになりますから」 「本当か」 「本当ですよ」 嘘偽りのない満面な笑みを見せる側仕えに、「……参考にはする」と言って、持っていた玩具を元にあった場所に置き、布団の方へ行った。 「坊っちゃまなら出来ますよ」 自然と布団を捲ったところへ横になった眞ノ助に、その布団を掛ける。 「……おやすみ」 「おやすみなさいませ。いい夢を」 ぽんと優しく叩いた側仕えは、立ち上がり、障子の方へ向かい、こちらに一礼をし、去っていった。 「……礼は……言わないからな」

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