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夏の風物詩と。 2

「けど! 知らなくても幽霊屋敷は面白そうだから! 行こう!」 「何故、そうなる」 条件反射でつい突っ込んでしまった。 言った後で、ハッとするもののとっくに遅い。 「……けど、どこかに行っていてもいいのか? 二年に上がってから、特に進学のことを考えなくてはいけないのに」 「いいじゃないか。たった一日ぐらい。僕達の青春はこの時しかないんだよ!」 「僕は別に求めてなんか──」 「いやっ! あの時も言ったでしょう、後々振り返ったら後悔するって。今の佐ノ内君はそう思うかもしれないけど、大人になった佐ノ内君がもっと楽しめば良かった…と思うかもよ」 自分が大人になることなんて、微塵も考えられない。決められた人生の中を、ただ考えることもなく機械的に過ごしているだけ。明日のことを、なんなら、今日家帰ってから何をしようとも考えたくもないし、変わらない、つまらない毎日を送るだけ。 それがそんな所に行って、変わるとは思えないが。 「じゃあ、夏休みの思い出の一つとして残そうよ。佐ノ内君の脳裏に焼きつけるような、印象に残すことをしてやるから!」 力こぶしを作り、眉をキッと上げる伊東に、眞ノ助はため息を吐いた。 「……分かった。行けばいいんだろ」 「佐ノ内君!」 「だが、僕が面白くないと思ったら、すぐに帰るからな」 「うん、分かったよ!」 ぱあっと輝かせる伊東を一瞥した後、今度こそ教室から出ようと歩を進める。 後ろから、「待って! 佐ノ内君の車のところまで一緒に行こう!」と慌てて追いかける伊東のことをどことなく聞いていた。

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