68 / 113
柘榴 1
あの日から、よく見る夢がある。
この世の者とは思えないほどに美しく儚げな女性を、この手で犯す夢。
あの時の──幽霊屋敷であった出来事があまりにも鮮明に記憶しているせいで、ようやく眠れた眞ノ助の日常に支障をきたすこととなった。
起きた時、下着の不愉快さを覚えて見てみると、いわゆる夢精をしていることが多かった。
それもあるが、側仕えを見る度に夢の中での出来事が頭にチラついてしまい、体が疼いてしまう。
そうなるのは無理もない。何故ならば、その犯している女性が、側仕えと瓜二つなのだから。
だがしかし。側仕えはれっきとした男性だ。それなのに女性だと思い、そのようなことをしてしまうとは。
側仕えが、『金平糖の君』にも非常によく似ているから、身近で見ている者が夢に反映してしまうのだろうが、そのような夢を見たことがなかったものだから、特に混乱を極めていった。
今まで以上に顔を直視出来ず、どうにかこうにか会わないように努めてしまうほどだ。
幽霊屋敷に行った時、どんな事があっても、玄関に迎えに来いと命じたというのに。
これでは本末転倒だ。
今日も学校が始まるが、送り迎いをいつもの運転手に任せることを命令してしまっていた。
「──佐ノ内君、おはよ! あの日以来だね! 残りの夏休みはどう過ごしていた?」
教室に入り、久しぶりの嫌な声を聞いてないフリをし、席に着いて少しした後、そもそもの元凶が話しかけてきた。
「……お前のせいで、残りの夏休みは最悪なものだった」
「え……それは、ごめん、ね……?」
ふつふつと怒りが湧き上がるのを感じ、睨みながらそう言うと、伊東が萎縮した。
伊東君もものすぎだよね。アレと遊ぶたなんて。と言う外野の声が聞こえてくる。
「お前があのような場所に連れて行かなければ、あいつの過去を触れることはなかった」
「過去……? 寂柳さんの名前の由来を聞くだけなのに、そんな大事があったの?」
「そんなにもだ。それに、僕達が行ったあの幽霊屋敷で働いていたとも言っていたぞ」
「えぇ!? そうなのっ!」
教室の喧騒が一瞬にして消し去った驚きの声。
いきなりの声に、目を丸くしたのも一瞬で、ものすごく不快だと示す表情を見せつけると、それが効果てきめんだったようだ、ハッとして、体を小さくする。
「……ごめん。この話は、お昼休みにしよう」
ともだちにシェアしよう!