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柘榴 4
その日から、伊東の行動力は早かった。
放課後になると、学校の図書室、時には眞ノ助を巻き込んで近所の図書館へ赴いたりもした。
言い出したのは眞ノ助だが、当の本人は伊東に調べろと命令したので、全く調べる気がなく、自分だけ調べるのはおかしいと無理やり連れて行ったのだろう。
しかし、嫌そうにしていた眞ノ助は、図書館はおろか、図書室もまともに行ったことがなかったものだから、新鮮さを覚え、内心良かったとも思っているのだった。
そうした、眞ノ助だけであればなかった、いつもと変わらない日常からいつもと違う日常に慣れ始めたある日のこと。
暗い部屋の中、乱れた息を吐きながら目を開けた。
ああ、またあの女性のことを犯してしまった。
ため息を吐き、秋の虫の鳴き声に混じるように、カチカチと鳴る掛け時計を見やると、一時を差していた。
ということは、真夜中の一時。
本来起きる時間までは、まだまだ時間がある。
寝直すかと、一旦目を閉じたもののすぐに目を開いた。
寝れない。
天井を見つめる。
途端、やけに大きく聞こえる秋の虫と掛け時計。
そして、気づかなかったフリをしようとしていた下着の不愉快さ。
もう限界だ。
バッと体を起こし、部屋を出た。
気分転換に手洗いに行って、綺麗にしてから再び寝に入ろうと思い、手洗い場に向かいに行く。
──そんな時だ。薄暗い廊下に不可解な物体が落ちていたことに気づく。
眞ノ助の部屋よりも奥まった箇所であるため、外の光がほぼ差さなく、間近でないとそれが何なのか分からない。
何か小動物が入り込んできたのか。それにしても、人が床板を軋ませているというのにビクともしない。
そうして。足元まで来、しゃがんだ時、辛うじて分かったのは。
円形状のが半分に割れ、中の粒らしきものが数粒、床に零れていた。
果物か何かなのかという考えに至った途端、ここ最近似たようなものを見かけたことを思い出す。
それは、なんだったか──。
と、思考の海に入りかけた時、何か物が落ちたような、少々大きめの音が聞こえ、肩が上がらんばかりに驚き、音がした方向へ思わず向く。
その方向は、果物らしい物の目の前の元・祖父の部屋。
あの時、あの側仕えが整理したらしいが、不安定な場所に物を置いていたのだろうか。
震える手で恐る恐る開けてみようかと思ったが、急に幼い頃に見た幽霊のような女のことを思い出してしまい、好奇心は一気に失せ、手洗いのことは忘れ逃げるように自室に入り、さっさと布団に潜った。
情けないことに、その日は結局、朝まで一睡寝られなかったという。
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