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柘榴 7

ぱちり、と目が開いた。 掛け時計を見やると、一時過ぎ。 またこの時間に起きてしまったようだ。 思わずため息を吐いて、不快な下着を洗いに行こうと眠たい体を起こす。 部屋から出、外廊下に沿って歩き、突き当たりに行こうとした時だ。 元々一つだったのであろう、円形状のが二つ、中の粒を零して落ちていた。 数日前に見た光景と同じだと思いながらも、今度は拾って確かめてみようと恐る恐る手に取った。 それは熟れた赤い果物のようだ。やはり、果物だったのかとホッとひと息を吐いた。 「……あ」 それをよく観察した時、眞ノ助はある光景を思い出す。 幽霊屋敷と呼んでいた、かつての旅館で『金平糖の君』とよく似た女性を追いかけていた時、その女性が入っていった部屋の扉に彫られた果物と同じだということを。 そう。この果物は。 「……柘榴」 さほど美味しいとは思ったことない果物だが、じゃあ何故これがここに落ちているのだろう。 数日前と違うのは、祖父の部屋の目の前ではなく、その手前に置かれており、それが何が目的でここにあるのか分からない不気味さが背中に徐々に這いつくばってくる。 ぶるり、と鳥肌が立つ。 その際に、欠片の柘榴が手から零れ落ち、床に落ちた。 拍子に数粒、零れる。 「………」 鈍い音を立てたものの、それはすぐに秋の虫にかき消されるかと──いや、今日は静かだった。 そのことでより背後から迫っているように錯覚した"真っ黒な何か"が、眞ノ助のことを襲いかかってくる。 怖い。けど、動けない。 混乱の窮地に立たされた。が、くぐもった声が聞こえた。 その声に肩を大きく震わせたが、その拍子に体が自由になり、恐怖を紛らわすために、その声がした部屋の障子を思いきって開けた。 「誰がいるのか!?」 真っ暗で何も見えない部屋に向かって叫ぶ。 しかし、返事はなく、眞ノ助の声が闇に呑まれるように再び静寂な部屋に戻るだけだった。 だとしたら、また気のせいだというのか。 少しの間目を凝らし、ゆっくりと部屋の中を見渡す。 目が慣れてきたとしても、影が揺らめくこともなく、先ほどのような声さえも聞こえない。 気のせいだとは思えない。 また聞こえてきた部屋は、祖父であった部屋。とすると、考えられるのは、まだ祖父がいるということ。 半年以上前に四十九日は過ぎている。だから、もうこの世にいないはずなのだが。

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