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柘榴 10

『眞ノ助。いるかね』 寝転がって本を読んでいる時、障子が開く音と共に、祖父の優しい声がした。 『おじーちゃん!』 とっくに飽きていた本を投げ捨て、祖父の元へと駆け寄った。 にっこりとし屈んでは、頭を撫でてくれ、そのこともあって、同じようににっこりと笑った。 そんな時だ。ふわっと匂いが漂ってきた。 それは甘く、その中に酸っぱさが入り混じったような、そんな香りだ。 その匂いは、つい最近もどこかで嗅いだことがある。 それは、何だっただろうか。 『眞ノ助。お前にこれをやろう』 そう言って差し出してきたのは、少々大きめの包み。 それを見た瞬間、匂いのことはそっちのけで、それを喜んで受け取り、重みを感じながらも、断りを入れずにリボンを解き、ビリビリに包装紙を破く。 中から現れたのは、木箱に紫の布が敷かれ、丁寧に入れられた小ぶりの赤い果物。 見たことがない物であったが、玩具以外でもらったのは初めてだった。 『おじーちゃん、これなあに?』 『これはね、柘榴っていうんだよ』 『ざくろ?』 『今の時期に食べれる、甘酸っぱい果物だ』 『甘酸っぱい……』 畳の上に置いた木箱から取ろうと、祖父はその場に座り、その柘榴を手に取った。 その時にもひときわ匂いが漂ってきたため、さっきの疑問に思ったことを口にした。 『甘酸っぱいって、おじーちゃんから匂うのと同じもの?』

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