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柘榴 11

あの時の祖父はどんな表情(かお)をしていたか──。 「──ねぇ、佐ノ内君!」 突如の声に瞠目する。 その時、眞ノ助の名を呼んだ人物と目が合い、相手は怒りを混ぜた表情を見せる。 「興味を持ってくれた心霊話を話していたのに、全く話を聞いてないじゃん!」 「興味を持ったとは一言も言ってないが」 眞ノ助の呟きにも似た一言は、伊東の「最初から話すから、今度はちゃんと聞いて」と言う言葉にかき消されてしまった。 眞ノ助はため息一つ吐いて、聞いているフリをして、目の前にある昼食に手をつけた。 意味深な言葉を呟いて、しかし、聞き返しても、何も言ってない風に装った側仕えに問い詰めたのは昨日のこと。 どんなに訊いても、適当にはぐらかされるか、「朝食に出された柘榴と同じ匂いですよ」と話題に逸れたことを言ってくるだけで、あの呟きに対してはそれ以上何も答えない。 これじゃあ、年齢を聞いてきた時と同じだ。 罪が消えない、ということはどういうことなのか。 それはこうして、学校に来てからもずっと考えていたことだった。 しかし、産まれてから罪の意識に苛まれたことがない眞ノ助にとっては、想像出来ないものだった。 だから、目の前で勝手ながらに話をしている伊東に、何となしに訊いてみることにした。 「……罪を、犯したことはあるか?」 「女性が何故、男性に付きまとっているかって?」 「「…………」」 数秒間の沈黙。 「……お前は、何を言ってるんだ」 「そっちこそ、生霊が分からないから訊いたのかと思ったら、違うこと?」 「また話を聞いてないの」とぶうぶう文句を垂れる伊東に、訊きたかったことを半ば無理やりに押し通す。 「罪、ねぇ……。急にそんな話をしてきてどうしたの? また寂柳さん絡み?」 「……別に……。今の話でそう思っただけだ」 「ふぅん……?」 相槌を打ちながらも、こちらをじっと見つめてくる伊東の視線が鬱陶しく、「なんだよっ」と眉を吊り上げた。 「いやぁ? 結ばれない関係であるだろうから、けど、どうしても気持ちが抑えきれなくて爆発しそうだから、僕にそう相談してきたのかと思ってきたけど、僕の体験談を話することにするよ」 何故か誇ったような顔を見せてくるものだから、何なんだこいつはという目で、返事代わりに返す。 主旨はズレているが、あながち間違ってない部分もあるので、悪態吐けないのもあるが。

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