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柘榴 15
頬に手を添え、小さくため息を吐く。
そのような仕草でも絵になるなと、息をするのも忘れてしまいそうになっていた。
「さて、私のような者の愚痴を聞いて、秋の肌寒さで坊っちゃまを風邪に引かせるわけにはいきませんから、早急に中へと入りましょうか」
「そんなにもやわな体じゃないぞ」
「ええ、そうですね。ですが、最近よく眠れてなさそうに見受けられますので」
「それはお前もだろ」
玄関へと案内する側仕えが、穏やかな笑みをしたまま固まった。
「……私の顔がそう見えるのです?」
「ああ、ものすごく。しかも、今日に限ったことじゃない。日に日に顔色が酷くなってるぞ。お前も寝れないのか?」
元々絹のように白い肌が、病的に青白く、そして、目の下にはくっきりと隈がある。
夢のことで気まずさを覚えてしばらく顔を合わせていなかったり、匂いに気を取られてすぐには気づかなかったが、恐らくその辺りからも寝不足で、顔に出ていたのかもしれない。
自分と同じで、悪い夢を見ているのだろうか。それも、罪の意識に苛まれて?
「……ふ、ふふ」
まるで、豆鉄砲を食らったかのような表情から一変、急に笑い出したのだ。
「何がおかしいんだ」
馬鹿にされたように思い、声を荒らげると、「これは大変失礼しました」と小さく咳払いをした。
「他人にも自分にも無関心であった人から、ましてや、ただの使用人にそのように心配されるとは思いませんでしたので、嬉しいやら面白いやらで、つい笑ってしまいました」
落ち着かせるためか、ふぅと息を吐いて、笑いを堪えているような顔をしていた。
言われて眞ノ助は、自身の言動に驚くこととなった。
たしかに、今までの側仕えならば、そのようなことになっていたとしても、全く気づきはせず、変わらずに自分の欲求不満をぶつけていた。
自分に寄り添ってくれると言ったからか、それともやっぱり、想い人と同じような顔をしているからなのか。
伝えたい、本当の気持ちが、偽りの気持ちをかいくぐって、浮上してこようとしてくる。
それを慌てて、ぐっと押さえ込んだ。
「本当に笑ってしまったことについては、大変申し訳ございません。それと、お気遣い誠にありがとうございます。ですが、本当に私のような者にはお気をなさらずに。坊っちゃま、寝れないのでしたら、夕食の前に少しだけ寝られてはいかがでしょう。私が添い寝致します」
「いい! 子ども扱いするな!」
添い寝してもらっているのを安易に想像してしまった自分を恥、それを振り払うように、さっさと玄関を潜った。
後ろから、「左様ですか」といつもと変わらない声音で聞きながら。
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