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柘榴 17

何なんだ、この光景は。 恐ろしいものであるのにも関わらず、怖いもの見たさなのか、そうしたい願望が強いからなのか、眞ノ助は瞬きをひとつもせず見ていた。 しかし。乱れた着物の女性がこちらを見たかのような視線を向けた時、瞳孔が開いた。 違う。あれは女性なんかじゃない。 そう確信づいた時、気づけば障子を乱暴に開けていた。 「お前ら、何をしているッ!」 怒りを最大限に爆発させた怒声をぶつけると、思ってもみなかった人物に男達は一斉にこちらに振り向いて固まった。 「ぼ、坊ちゃん……」 「坊ちゃんの方こそどうされたのです、こんな夜更けに」 動揺を隠せないながらも、いそいそと寝巻きを整えようとして、何もなかったかのように装う。 その男らの間から、女性に見せかけられたあの人物が、地に伏せて、苦しそうに悶えている姿が目に映った。 そのことも含め、怒りに怒りを重ねた。 「あくまでもしらを切るつもりか! この外道がッ!」 持っていた柘榴を使用人の一人にめかげて投擲(とうてき)する。 見事に当たり、顔にまともに食らった使用人は呻き、その場にうずくまった。 「いくら坊ちゃんでもこのようなことをなさるのは、あまりにも頂けませんね」 「ハッ! よくまあそんな戯れ言を口に出来るな。一人に対して寄ってたかって乱暴な真似をしている奴らに、罰を下しただけだが?」 「……っ」 事実だと自分でも分かっているのだろう、それ以上は何も言えず、憎たらしいという表情をありありと見せてくる。 この感じ、よくやっていたな。 清々しい気持ちになってきて、余裕な笑みを見せつける。 と、その憎いと見せていた使用人が、ふと小馬鹿にしているような表情を滲ませる。 「そうは仰ってますが、坊ちゃんもこやつのことを見たら、そんな余裕を言えることはなくなるでしょう」 「何が──っ」 ぐいっと、髪を乱暴に掴み上げた"女性"──いや、あの側仕えを眞ノ助に見せつけるかのように、前へと引きずり出す。 痛がる表情の中に、うっすらと笑みを浮かべ、「足りない……欲しい……」と艶のある声を漏らしている。 「だめだ……っ、やめろ……」 そう口では言うものの、目線を下げてしまった、女性物の着物が大きくはだけ、きっと、明るいところで見れば白く柔い肌が目に映ってしまい、思ってはいけない感情に支配されそうになる。

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