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柘榴 18

「坊ちゃんも、淫乱な使用人を嬲りたいと思っているはず。そんなにも獲物を狩る獣の目をなさっているのですから」 「僕、が……そんな目……」 「いえ、同じ男として分かりますよ。この女のように華奢で柔い肌を傷つけまくりたいと。そうなのでしょう?」 「……そんなわけが……っ」 ぐっと、手に力が入る。 したいわけがない。ましてや、相手は男だ。どんなに女物の着物を着ていようが、誘うような甘えた声を出していようが、自分と同じモノが付いているれっきとした男だ。 ──そう、その側仕えのモノに、信じられないものがあった。 薄暗くて、はっきりとは見えなかったが、恐らく──縛り付けられている。 ──……罪が、消えないのです。 震える声で呟いた言葉。 罪は、罪なのは、側仕え自身ではなく、今目の前にいる使用人達。 頭を振った。そして、激昂する。 「言葉を慎め、下賎ども! お前らのようなのと僕が一緒になって嬲るなど、愚かな行為をするはずがないだろう! それともあれか? 元々人の不幸で成り立つ、卑しい身分の佐ノ内家の次期当主様のことを陥れたいというのか?」 「いえ、そういうことでは……」 「そう言っているのも同然だ。まあいい。そんなにもここで仕えたくないのなら、父に掛け合っておくぞ」 「それだけは……!」 「どうあがいても、今後平気な顔をして、僕の前にいられるのが全くもって癪だからな。解雇は免れないだろうな」 「…………」 表情がごっそりと抜け落ちた使用人らが茫然自失となって、へたりこむ。 やっぱりこの光景は、大変愉快だ。 気分が高揚し、鼻歌でも歌ってしまいそうなぐらい機嫌が良くなったが、側仕えの苦しそうな声に、その気持ちは打ち消された。 さっきから何故、そんなにも苦しそうにしている。 「どけ」と柘榴を当てた使用人を跳ね除け、側仕えに近寄った。 「お前……どうしたんだ、大丈夫なのか」 「欲しい……欲しい……」 「おい、聞いているのかっ」 体を揺さぶる。それでも、熱い息を吐いて、意味の分からない言葉をぶつぶつ呟くばかり。 それにしても、触れた肩がやけにじんわりと熱い。使用人らにあのようなことをされたから、熱でも出したのだろうか。 いや、熱なのか? 「おい、お前ら。こいつに何か盛ったんじゃないだろうな?!」

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