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柘榴 19 ※眞ノ助×寂柳(襲い受け)

勝手に去ろうとする使用人に怒鳴りつけると、さっき側仕えの髪を掴み上げ、愚かな行為を勧めようとした使用人が振り返る。 「そうだとしたら、どうします?」 「貴様……っ!」 下卑た笑いをする使用人に食ってかかろうとする。が、側仕えに腕を引っ張られ、反射的にそちらを向いたのだが。 「……!」 目と鼻の先に側仕えがいる。いや、それよりも、唇に柔らかいものが触れており、それが口付けだと徐々に分かってきた途端、恥ずかしさと驚きですぐに離そうとしたが、がっしりと頭を掴まれ、身動きが出来なかった。 そのままされるがままに、眞ノ助の唇を角度を変え、何度も唇を重ねてくる。 「や……っ、め……っ」 流されてはいけないとせめての抵抗として、口で言おうとしたものの、上唇、下唇と舐められ、口付け以上に驚愕することとなる。 その僅かに気を抜いた隙を狙われたようだ。その舌を気が緩んだ唇を割り開いて、眞ノ助の舌と絡ませ合う。 「……ふっ!? ん、んっ! ふ……っ、うっ……ん……っ」 口付けすらまだだったのに、こんな激しいことをされるだなんて。 側仕えの舌から逃れようにも、上手い具合に行く手を阻み、追い詰められていく。 まるで、狙った獲物を逃さず、自身の体をまきつけてくる蛇のようだ。 今までに聞いたことのないいやらしい水音が、脳を直接揺さぶられているようで、腹の奥に孕んだ熱が解放されたくて仕方ない状態へと陥る。 そんなことをしたら、下劣な使用人達と同じ人間になる。 そうなってたまるか。 己を叱咤し、震えてままならない掴んでいた手に力をどうにか入れると、強引に引き離した。 「は……はぁ……は……っ」 乱れきった息を整えるのも間もなく、眞ノ助にそうされるとは思わなかったと言わんばかりの惚けた顔に、犬のように舌をだらりと出したままでこちらを見つめていた。 薄明かりであるのに、いや、そうであるからか、その赤らんだ顔といい、さらに下半身に熱を籠る要因となり、眞ノ助は慌てて目を逸らす。 「……して……」 「は……?」 「どう、して……旦那様は、拒むのです……? 私のどこが、至りませんか……?」 「…………っ!」 掴んでいた手を両手で添えられたかと思えば、それを唇に近づけ、指先を啄む。 考えられない行動と、甘い痺れに酔いしれて、側仕えの思うがままにされかけたが、半ば強引に手を離した。

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