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柘榴 25
「……これから私が話すことは、独り言であり、醒めない悪夢のような話です。……それで、私がどれほど卑しいか、充分に分かるかと」
すっと、姿勢を正した側仕えの姿に、眞ノ助も目の前に座り、全面に聞く姿勢を取った。
怖いもの見たさにも近い、寂柳の話を聞こうとする眞ノ助を一瞥した後、ゆっくりと口を開いた。
「──私は、とある裕福な家の長男として生を受けました。恐らく、佐ノ内家と変わらない頃に先代が築き、それを父も脈々と受け継ぎ、当たり前のように、私も受け継ぐ──そのはずでした」
語尾が震えていた。怒りなのか、悲しみなのか、眞ノ助には分からなかった。
「とある投資家に、ある企業の株を勧められたそうです。父はやんわりとお断りをしたそうですが、どういうわけか、父がその企業の株を買ったことになっていて、結果、大損となり、その日暮らしを強いられることになりました」
膝上に乗せていた両手に力がこもった。それから見るに、悔しさと情けなさで耐えきれないといったところか。
「父母の他に、歳の離れた弟や妹がおりました。幼い二人は今までの、何不自由のない生活に慣れておりましたから、常にお腹が空いている状況には耐えられませんでした。よく私の分のもあげておりましたが、それでも満たされることがなく、そういうのもきっかけで、心の余裕もなくなっていき、次第に醜さが露呈していったのです」
ややうつむきがちになった側仕えは、小さくため息を吐く。薄ぼんやりとした明かりに照らされた、伏せられた長いまつ毛が、その独り言に暗い影を落としているようだった。
「そんな醜さに耐えきれなくなり、幼い私でも何か出来ることはないかと模索している最中、ある男の人に声を掛けられました。──後の、『華楼 』の主人に当たる方でした」
ため息混じりに言い、固く口を閉ざす。
悪夢だと自身の境遇をそう称していたことから、この先のことは、口にしたくないのだろうと思われる。
止めろ、と口にするが前に、意を決したような顔をした寂柳が、話を再開する。
「まだ何も知らないであろう、幼くも、ひと目見て、生活に余裕がないことが分かったのでしょう。言葉巧みに子どもでも働ける場所であることを吹聴して、そして、両親にも恐らく、上手い具合に言ったのでしょうね。大金と引き換えに、私は売られたのです」
「それって……」
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