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柘榴 27
全ての意味が分からずとも、数人の使用人が一人に対して、そして、流されるがままに『柘榴』と交わった自身がしたことだと、充分に分かった。
呆然とする眞ノ助のことを気づかない寂柳は、独り言を続ける。
「そのおかげか、大いに売り上げが良かったようで、『華楼』の中で、向けられることがなかった羨望の眼差しが向けられることになりましたし、主人の機嫌も良くなり、自身の体を代償にならばどうなっても良いと、この"仕事"を頑張ろうと思いましたが、一部の嫉妬の目を向けていた姐様らに、聞こえる悪口と、"商品"にならない傷を負わされることになりました」
徐々に寂柳の言葉に耳を傾けていた眞ノ助は、あの体中にあった古傷はそうだったのかと、納得してしまった。
「そして、商品にもならなくなった私を手のひらを返すように、主人はまた私のことを折檻し始めました」
右手首辺りを掴んだ左手が小刻みに震えていた。
「姐様で終わると思っていた痛みの続きに、泣きそうになりました。ですが、泣いたらもっと酷いことをされると、感情を押し殺し、痛みを耐える日々を送りました。そうしていくうちに、疲弊していったのでしょう、感情をどこかに置き捨ててしまいました」
寝る前、玩具を通して祖父との思い出を浸っている時、恥ずかしながらもみっともない姿を晒した次の日に、側仕えに指摘され、むきになって言い返した時、側仕えが『一時期は泣く気力がないぐらいに疲弊していた』と今のように、独り言を言っていた。
それがこのことだったとは。あまりにも惨たらしすぎる。
「そうした日々を送っている最中、ある男性が、私のことを指名したのです。価値もない私にあまりにももの好きだと思い、いざ対面した時、失くした感情……特に憎悪が恐ろしいぐらいに湧き上がって来ました。そんな表面に出ていたであろう感情を、その"旦那様"は知ってか知らずか、あるお遊びを提案なさいました。わたしの源氏名、柘榴にちなんだ、柘榴を投げ、弾け飛んだ果肉の数分、私のことを可愛がるというものです」
薬を盛られていたという『柘榴』であった時、使用人に投げつけた柘榴を手に取って、そう言っていた。
そのことを言っていたのか。
すると突然、寂柳の唇が見るからに震え始めた。どうしたものかと思っていると、深呼吸した後、こう言った。
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