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『金平糖の君へ』1

はぁ、と息を吐くと、白い息となり、雲に覆われた空へと消えていく。 それをどことなく見つめていると、「今日も寒いね」と隣で歩いている、唯一話せる友人のような相手が、何気なしに話しかけてきた。 返事代わりに、その相手にやってもらったマフラーに顔を埋める。 そのことに対して、いつものことだと小さく肩を竦める仕草をし、そのまま話を続ける。 「去年と同じならば、ここまで寒くならないよね。また雪が降るのかな。そうしたら、また休校になるんだよね。やだなぁ、佐ノ内君と会えなくなる」 心底残念だと、嘘ではない大きなため息を吐くと、それが白い息となって現れる。 それを横目で見つつも、「会えなくなる」という単語が頭で反芻した。 あの後、父にあの夜の出来事を、ぼかしつつも伝えると、寂柳に手を出てきた使用人らは全員、その日で解雇された。 他の使用人が噂をしていたところを偶然耳にしたが、寂柳が『柘榴』であった頃、世話人であった男、祖父の頃から仕えていた者と、寂柳や祖父と関わりのある者だったようだ。 だとしたら、『柘榴』であった頃からあのようなことをしていたということも考えられる。赦されるべきではない者達が離れて、そのことに関しては、安堵する。 問題は寂柳の方だ。 眞ノ助に宣言したように、あの後すぐに父にお暇することを告げたそうだ。だが、眞ノ助の側仕えであるため、愚息が何かしたのかと、真っ先にそう思い、問い詰めたようだが、自分が過ちを犯したから、責任を持ってお暇させて欲しいと言ったそうだ。 しかし、次が見つかるまで眞ノ助の側仕えをしてろ、と言われたらしく、ところが、あのようなことがあった後だ。眞ノ助に合わせる顔がないと、体調不良を理由に、側仕えを成し遂げていなかった。 だから、毎日、他の使用人が眞ノ助の世話をしていたが、傍若無人で傲慢な主人の相手はしてられないと、まるで腫れ物でも触るかのような接し方をしてくるものだから、眞ノ助の方から、「自分の身支度だけはする。あとは、食事などの時間が来たら、知らせるだけでいい」と、極力会わないようにしていた。 このまま、あの側仕えと離れてしまうのかと懸念していたが、その心配はなさそうだ。 が、あっちが会う気がないのだから、いい加減父から宣告されてもおかしくはない。 祖父の"知り合い"とはいえ、その本人はこの世にいないのだから、父が何したっていいのだから。

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