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『金平糖の君へ』 2
もやもやとした気持ちを、未だに掛け間違えるボタンで無理やり押さえ込んで、再びつまらない毎日を送り、季節が冬に移り変わった、ある日のこと。
いつも以上に冷え込み、身を震わせながらも自身の部屋から出た時、目の前に広がる庭を目にした時、小さく息を吐いた。
白い粒が、ほわりほわりと空から舞っていたのだ。
ああ、だからこんなにも寒いのか。
この辺りで雪が降るなんていつぶりだろうか。
昔、今となっては思い出したくもない祖父と共に、雪だるまや雪を投げ合ったりと、ありきたりな遊びをしていた。
当時の自分は、珍しい雪にわくわくして楽しんでいたが、今の自分は、目にもしたくない、くだらないものだった。
ここに寂柳がいたら、どんな反応を見せていただろうか。
春の時のように浮かれて、雪の中一人ではしゃいで、せっせと雪だるまを作るのだろうか。それとも、何の前触れもなく、こちらに雪を投げつけて、いつものようにからかってくるのだろうか。
働かされた頃は、子どものように自由に楽しめなかっただろうから、特にそのような反応をするのだろう。
「寂柳……何故、そばにいないんだ」
心中で呟いていた言葉は、声に出ていたものの、少しずつ積もる雪の中へと埋もれてしまった。
その時、ギシッと床の軋む音がした。
「寂柳っ! ──あ」
驚愕と喜びが混ぜ合わさった表情で振り返ったが、相手を見るなり、表情が固まった。
眞ノ助や寂柳よりも背が高そうな、凛々しい顔立ちをした男性。
服装から見るからに、使用人のようだが、この屋敷では見たことがない。
突然、寂柳が来た時のように、父の知り合いの伝手という体で来た者だろうか。
とすると、寂柳は。
「……お前は、何者だ」
険しい顔をして、警戒する。
そんな表情を見せても男性は顔色一つも変えず、頭を下げた。
「ご挨拶が遅れました。私は、こちらで人手が欲しいということを雇らせていただきました、ゆきとと申します」
「ゆきと……?」
「はい。雪の人と書いて、『雪人』と言います」
頭を上げた時には、笑みらしい表情を見せるが、ほぼ表情は固い。
いや、そんなことはどうでもいい。この男は何故、名前だけを紹介するのか。変な奴だという意味合いを込めて、そのことを追求すると、雪人と名乗った使用人はこう答えた。
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