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第7話

「……suimasen sore kawanakute daizyobudesu」  俺は自分の制服のローファーを見て項垂れながら呟く。  店員の男の子はとてもとても気まずそうな顔をしてバイアグラを返品商品用のカゴに入れていた。それを無事見送ってから、商品をエコバックに収める。偉いだろ俺。ちゃんと自分用のエコバック持ってるもん。アイボリーカラーの、つるつるした布の、折りたためるやつ。ににがくれたやつ。なんか、対象商品にくっついてるシールを何個か集めて必ずもらえるブツらしい。いい商売だ。 「……なにしてンの」  家の前。無駄にどデカい木の門のところに、我が家の専属運転手の成親(なりちか)が立っている。煙草をスイスイ吸いながら、俺が向こうの道からやってくるのをずっと見ていた。 「坊ちゃんの帰りをお待ち申していました」  あ、コレ基本姿勢だから。成親の基本体位。こういう、武士みたいな言い方と風格を持っている男だから。歳は40くらいだっけか。 「餓鬼の子守りじゃねえんだから……待ってなくていいよ」 「いいえ。成親。無事坊ちゃんが門をくぐるまでは確認しないと気がすまない性分なので」 「ほう」  そんなこと、前にも言ってたっけな。俺が小学生くらいの頃か。台風直撃で学校早帰りになって、ほんとは親父の部下が迎えに来てくれるはずだったんだけど、手違いとか忙しいとかで誰も来れなくて、1人で帰って。何度も傘が吹っ飛んで、俺はびしょ濡れになっていた。  そんな日も、成親だけは忙しい中俺のことを家の門の前まで迎えに来てくれたし、俺が家に着くのを外で待っていてくれた。高そうなスーツをぐしょぐしょにして。待っていてくれた。

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