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第8話

「あ、僕達は一つでいいです、ケーキ」 チョーカーから真琴だとわかる。 「あら、どうして?遠慮なんてしないでいいのよ?」 「僕は甘い物、好きなんですが、弟の三琴は甘い物、得意じゃないんです」 「へえ、双子でも好き嫌いが違うものなのね」 母さんが感心したように二人を見る。 「いえ、嫌いでは無いんですけど、引っ越して来てすぐ、食材も無くて、コンビニ、て所で簡単に料理が買える、とお父様に教わって、生まれて初めて、カップ麺を買ったんですけど」 三琴の話しに耳を傾けた。 隣の真琴は一つのケーキをフォークで慎重に二つに割っている。 「....初めてのコンビニで、初めてのカップ麺....?」 紅茶のカップを手に圭が怪訝な眼差し。 俺も流石に驚き、続きを待った。 「カップ麺に詳しく無いものですから...激辛ラーメンを買ってしまったんです。真琴は口から火が出る!て、食べきれ無かったんですけど、僕はそれから、激辛な食べ物が好物になって....」 「なるほど」 「ついでに、そこで順平くんに救われました」 「俺!?」 激辛ラーメンと俺に何の共通点が? 「初めてのコンビニで、久しぶりにお金で支払おうとしたんです。ですが、飲み物やアイスもあり、普段、あまりお財布にお金入れてないものですから、足りなくて焦ってました」 「....金持ちなんじゃないの?」 圭が尋ねると、三琴が微笑んだ。 「そんなことないです。ただ、カードは二人で一枚、なので、カードで支払おう、としたら、帰宅してわかったのですが、真琴が持っていたんです。めちゃくちゃ焦ってたら...後ろに並んでいた順平くんが足りないぶんを支払ってくださって....」 圭が俺を見上げる。 「....そういえば」 レジ前で、お金が足りずに焦っているチビがいて、立て替えたな...一週間ほど前だったか。 あれ、三琴だったのか。 「帰宅して、真琴に話して。真琴も真琴で、嬉しい事があったと話し初めて....」 「引っ越して間もなくて、つい、周りを見ながら歩いてたせいで、ぶつかっちゃったんです、通りすがりの人と。 凄く怒鳴られてしまい、怖かったんですけど、胸に抱いていた、買ったばかりのオレンジや林檎の入った袋を拍子に落としてしまい....でも、大丈夫か?て声を掛けてくれて、拾ってくれた優しい方がいらしたんです。それが、順平くんで」 「互いに同じ人に助けられて、これはもう運命、て一緒に話し...」 「でも、なんで俺の家や名前とかわかったの...?」 「「お父様とパパに話し、興信所で調べて貰いました」」 「「....興信所」」 俺と圭が見事にハモった。

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