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第10話
「ご馳走様でした。ご挨拶のつもりが夕飯までご馳走になって、とても美味しかったです」
真琴が母さんに笑顔で礼を言い、頭を下げ、
「僕もご馳走様でした。とっても美味しかったです。宜しければ、今度、お料理、教えてください。あ、今度は忘れずに手土産もお持ちします」
三琴もまた、真琴と同じく丁寧に挨拶し、頭を下げ、帰宅していった。
普段、俺の部屋に上がる圭なのだが、疲労困憊、といった様子で、
「ご馳走様でした、お邪魔しました」
と、頭を下げて帰っていき。
暫くすると、二つ上のアルファの兄、順一が大学から帰宅。
「おかえりなさい、順一、お夕飯は?」
「サークル仲間と食べて来た。....誰か来てたの?」
テーブルにまだ置かれたままだった、三人分の小皿にフォーク、ティーカップに視線を落とすと、母さんが甘い溜息をつき、両頬を抑えた。
「順平のお友達の双子ちゃんと圭くんが寄って帰ったの」
「へえ、双子?」
「ああ、うちのクラスに転校して来て、真向かいに住んでる」
「真向かいに?」
順一が目を見開いた。
「ああ、にしても、本当に可愛らしかったわ。置き物にして飾っておきたいくらい」
ぶ、と俺は飲んでいた紅茶を吹き出した。
「物騒な話し止めてくれよ、母さん」
「いやね、本当にする訳ないじゃない。例えよ、例え」
剥製やホルマリン漬けされ、飾られた、お人形さんみたいな真琴と三琴が浮かんでしまった。
「そんなに可愛いんだ?その双子。圭ちゃんより?」
「お前、やたら、圭びいきだよなー」
「可愛いし美人じゃん?色も白いし、顔のパーツも整っててさー」
「圭くんが霞んで見える可愛さよ。あ、でも、圭くんは可愛い、というより美人さんだものねえ」
「....母さん、それ、絶対、圭には言うなよ」
初対面の二人に可愛さで負け、双子と同じオメガのあいつのプライドがズタボロになりそうだ。
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