10 / 22

第10話

「ご馳走様でした。ご挨拶のつもりが夕飯までご馳走になって、とても美味しかったです」 真琴が母さんに笑顔で礼を言い、頭を下げ、 「僕もご馳走様でした。とっても美味しかったです。宜しければ、今度、お料理、教えてください。あ、今度は忘れずに手土産もお持ちします」 三琴もまた、真琴と同じく丁寧に挨拶し、頭を下げ、帰宅していった。 普段、俺の部屋に上がる圭なのだが、疲労困憊、といった様子で、 「ご馳走様でした、お邪魔しました」 と、頭を下げて帰っていき。 暫くすると、二つ上のアルファの兄、順一が大学から帰宅。 「おかえりなさい、順一、お夕飯は?」 「サークル仲間と食べて来た。....誰か来てたの?」 テーブルにまだ置かれたままだった、三人分の小皿にフォーク、ティーカップに視線を落とすと、母さんが甘い溜息をつき、両頬を抑えた。 「順平のお友達の双子ちゃんと圭くんが寄って帰ったの」 「へえ、双子?」 「ああ、うちのクラスに転校して来て、真向かいに住んでる」 「真向かいに?」 順一が目を見開いた。 「ああ、にしても、本当に可愛らしかったわ。置き物にして飾っておきたいくらい」 ぶ、と俺は飲んでいた紅茶を吹き出した。 「物騒な話し止めてくれよ、母さん」 「いやね、本当にする訳ないじゃない。例えよ、例え」 剥製やホルマリン漬けされ、飾られた、お人形さんみたいな真琴と三琴が浮かんでしまった。 「そんなに可愛いんだ?その双子。圭ちゃんより?」 「お前、やたら、圭びいきだよなー」 「可愛いし美人じゃん?色も白いし、顔のパーツも整っててさー」 「圭くんが霞んで見える可愛さよ。あ、でも、圭くんは可愛い、というより美人さんだものねえ」 「....母さん、それ、絶対、圭には言うなよ」 初対面の二人に可愛さで負け、双子と同じオメガのあいつのプライドがズタボロになりそうだ。

ともだちにシェアしよう!