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第13話
ようやく。待ちに待った、部活の時間。
一日振りの弓道に胸が馳せる。
「順平、楽しみそうだね」
「ああ、まあな」
互いに弓道着を纏い、笑い合う。
男共の野太い歓声を浴びながら、同じく、白と紺の袴に右手に弓掛け。所謂、弓を引く際に使用する手袋だ。
足元には足袋といった、俺達と同じ、弓道着の真琴と三琴が現れた。
「馬子にも衣装だな」
「「ありがとう!圭くん!」」
「や。褒め言葉じゃないから、双子」
俺が教えるよ、俺が、俺が、な取り巻き連中が、手取り足取り教えて、あわよくば、真琴と三琴に触れたいのが見え見えに近づいている。
「大丈夫です、ね、真琴」
「だね、三琴」
「いや、初心者はちゃんと...」
手解きを受けないと危ないぞ、と言う前に、真琴と三琴は並び、見事な構えで弓がしなる。
唖然としていると、二人の放った矢は同時に的の中心に勢い良く刺さった。
歓声も忘れ、一同、呆然....。
「弓道、習ってたの?神崎くん」
先輩オメガが二人に話しかけると、
「昨夜、弓道場でお父様の知り合いの先生に特訓していただいて」
真琴がにっこり微笑む。
隣では、再び、三琴が矢を放ち、見事に的の中心を射抜いた。
「すげー!」
「カッコいいー!」
アルファの生徒だけでは無く、オメガの生徒までもが、興奮気味だ。
「順平くん達もやろうよ!」
真琴に笑顔で促されたが、俺はともかく、圭は下手っぴだ...。
「...双子に負けたな、圭」
「うるさい!」
圭が放った矢は的には届かず、萎えるように途中で地面に刺さった。
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