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第19話

両隣に真琴と三琴がくっ付いての屋上での昼休み。 抵抗を諦めた順平は家政婦の作った弁当に舌鼓を打つ。 三人がベッタリ、弁当をつつく様に、正面に座る圭は悔しいのかなんなのか、自分ですらわからず、泣きそうな顔で口をへの字に曲げ、三人を眺めながら自身の弁当を食べる。 「今日のお弁当、美味しいね!真琴!卵焼きの中に、ほら、辛子明太子が入ってる」 「僕は、ほら、明太子マヨだよ。三琴が辛い物が好きだから実田さんが考えてくれたんだろうね」 ふと、順平が二人の弁当をチラ見すると、卵焼きにハート型のミニハンバーグ、ミニトマトにブロッコリー、枝豆らしい豆ご飯。 「へー、美味そうだな」 「「でしょ!?はい!順平くん!」」 二人はそれぞれ卵焼きを箸に取ると、順平の口に差し出した。 「や、だから、俺の口は一つしか...ま、いっか」 真琴の卵焼きをあーん、と食べた後、三琴の卵焼きを戴いた。 「美味いな」 二人の弁当の四つある卵焼きが二つになり、 「お前らにはこれやるよ」 と、真琴と三琴の弁当に唐揚げを一つずつ乗せた。 「「わー!ありがとう!順平くん」」 「あ!そうだ!圭くんも、はい、あーん!」 真琴が笑顔で圭に向けて箸で掴んだ、卵焼きを差し出し、 「あ!僕も僕も!」 慌てて、 「はい!圭くん、あーん!」 三琴が次いで、明太子が具材の卵焼きを圭に溌剌として差し出した。 まさか自分にまで、と、真顔になった圭は、 「要らないよ!」 と、吐き捨てると、真琴と三琴から笑顔が消え、切ない表情に変わった。 「お前も戴いたら?圭」 ウインナーをもぐもぐさせながら、順平は圭に促す。 泣きそうな二人の顔に居た堪れない気分になり、口を開けると、すぐさま、真琴と三琴に笑顔が戻り、圭は圭で、 「....美味しい」 実田の作った卵焼きは絶品で口元を軽く握った拳を当て、咀嚼した。 「...卵焼き、無くなっちゃっただろ」 圭は自身の甘い卵焼きを二人の弁当に乗せ、真琴と三琴は喜んだ。 真琴と三琴は弁当を食べ終えると、巾着袋から小さなタッパーを取り出し、順平と圭が眺めると、カパ、と開けたタッパーの中にはうさぎ型の林檎が三つずつ入っている。 ピックで、真琴と三琴は、シャク、と林檎に齧り付き、 「「美味しい!」」 そうして、また二人は順平と圭にうさぎ型の林檎を、 「「はい!あーん!」」 と、食べさせた。 「にしても、もうすぐ中間テストだな。うちのクラスは範囲が知らされたんだけど、お前のクラスは?圭」 林檎を齧りながら、 「うちのクラスもあったよ」 「お前らは引越して来て間も無いしな、ま、頑張れ」 「「うん!」」 引越して来たばかりで、真琴、三琴には少々、厳しいだろう、と思い、掛けた言葉だった。

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