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第20話
真琴と三琴が、
「「ただいまー!」」
元気よく並んで帰宅すると、真っ先に、教育係の津島が出迎えた。
「おかえりなさいませ、真琴様、三琴様。本日は家庭教師の日ですよ。ご準備を」
「「はーい」」
津島を見ないまま、二人は津島を横切り、キッチンにいる実田に弁当箱を差し出した。
「どうでした?お口に合いましたか?」
「うん!とーっても、美味しかった!」
真琴が少しつま先立ちし、これでもか、な笑顔。
隣の三琴もまた、溢れんばかりの笑顔で、
「順平くんと圭くんにもお裾分けしたらね!美味しい、て言ってた!」
「そうですか、それは良かった」
にっこり二人に微笑むと、
「「いつもありがとう実田さん!」」
ふふ、と声を揃えて感謝を述べる真琴と三琴の姿に、
「...私はありがとう、の、あ、も言われた事が無いというのに...」
遠巻きに見つめる津島は悲愴な顔だ。
二人は仲良く一緒にお風呂に浸かり、真琴は白と薄いパープルのセットアップのパーカー、三琴は白と淡いミントブルーのセットアップのパーカー、色違いの部屋着に着替え、ダイニングで実田の淹れた、ミルクティーを飲みながら、キッチンに立つ実田と仲良くお喋りタイム。
しばらくすると、玄関のチャイムが鳴った。
モニターを見ると、家庭教師の須崎。
タオルで手を拭き、スリッパをすらせながら、実田が玄関を開けると、爽やか好青年、を絵に書いたような須崎の笑顔があった。
Tシャツにシャツを羽織り、デニム、髪のセットもまたお洒落だ。
「こんにちは、須崎さん」
「こんにちは、実田さん。これ、来る途中に見かけて...良かったら」
実田に渡されたのは、純白の薔薇の花束。
「わあ、いい香り!」
「いつも多忙な実田さんに、薔薇の香りはリラックス効果もあると言いますし、可憐な薔薇が実田さんにそっくりだと感じまして」
照れることも無く、実田を笑顔で見つめる須崎に、
「...キザな野郎だな」
ち、とやり取りを眺めていた津島が舌打ちをした。
「素敵!早速、リビングに飾りますね、ちょうど、花を変えようかと思っていた所なんです」
花束を受け取り、実田が微笑んだ。
「じゃ、真琴くん、三琴くん、部屋に移動しようか」
「頑張ったらご褒美がありますよ、真琴様、三琴様」
実田が二人に微笑むと、
「「ご褒美!?」」
俄然、やる気になった二人。
「はーい」と、全くやる気のない返事をされた挙句、二人に素通りされた津島は、
「....歯痒い。しかし、敗北では無い。お二人に餌を与えたようなものだから」
険しい顔で奥歯を噛み締めた。
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