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10年越しの初恋 10

 僕は運命的に奇跡的に、駿と再会した。  まだ時差ボケから覚めきらない身体のせいか、安心したことにより、急に眠くなってきてしまった。 「眠いのか」 「時差ぼけがね」 「そうか、帰国仕したばかりだもんな。もうこんな時間だし、そろそろ帰るか」 「……うん、そうだね」  僕と駿は、まだバーカウンターの下で、そっと手を繋いでいた。  離れがたい気持ちで、繋がっている。 「えっと、駿……そろそろ手をいい?」 「あ、ごめん……なぁ……想、俺たち、また……手をちゃんと繋げるよな?」  駿が切なげに訴えたので、ハッとした。  最後に僕たちが触れ合ったのはいつだ?  あの夏のトンネルだ。  突然のキスに頭がついていかなくて、反射的に撥ね除けてしまい……駿の胸をドンっと突き飛ばした。  あの日の手の感触は、今でも覚えている。   ずっとずっと……後悔していた。  だが、今まで……僕の抵抗を受け止めた駿の気持ちを考えたことがあったか。相手の気持ちからあの日を見つめたことがあったか。  あれは、僕の拒絶で終わった夏だった。  あの日を最後に……僕たち10年も離れていたんだね。 「駿……僕たち付き合っているんだよね?」 「お、おう! 改まって言われると照れるが……もちろんだ!」 「じゃあ、いつでも繋げられるよ」  駿はやっと安心したようで、手を思い切った様子でパッと離した。  それなのに、駅までの帰り道、まだ繋いでいた左手をじっと見つめている。 「どうしたの?」 「いや、勿体なくて、今晩は手を洗えないよ」 「くすっ、僕はアイドルじゃないよ。ちゃんと洗って」 「分かっているさ……でも10年越しの触れ合いだったから、名残惜しいんだよ」 「駿……僕だって同じだ。もっと触れ合っていたかったよ」 「お、おう」  駿の歩き方が、突然ギクシャクになった。  僕、もしかして……誘うようなことを言ってしまった?  だって……僕だって同じ気持ちだからだよ。 (10年前のキスの続きが待ち遠しい)  なんて……面と向かっては言えないけれどもね。 「じゃあ、週末に……一応、連絡先渡しておく」 「あ、僕も」 「いつの間に?」 「駿こそ」  お互い化粧室に行っている間に、カクテルのコースターの裏に電話番号を書いていたなんて。 「ちょっと古くさいか」 「ううん、ドラマチックだよ」 「週末が待ち遠しいよ」 「僕も!」  新宿で、僕と駿は手を振り合った。  いよいよ……  次は『初デート』だね。

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