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初恋の向こう 2 

 トンネルの中は、明るい光で包まれていた。  あの日は雨音をBGMに高鳴る鼓動を隠したが、今日は違う。  もう土砂降りの雨じゃない。  潮騒が、俺の心を鼓舞していく! 「なぁ……ちゃんとしたい」 「……いいよ」    それだけで通じ合うのは、俺たちが離れていても想い合っていた証拠だ。  想は周囲を見回してからトンネルの壁に背中を預け、覚悟を決めたように瞼をそっと閉じた。 (キスしていいよ……)  そんな甘いフレーズが聞こえたような。 「想……好きだ」  ところが、いざキスしようと思うと、あの日、無理矢理しようとしたことが思い出されて、手が震えてしまった。  あれが俺たちの別れの決定打となってしまったから。  そうか……俺……怖いんだ。  想……俺たち、男同士だ。  本当に俺からのキスを、受け入れてくれるのか。 ****  駿……  ここは、10年前、駿に突然キスされそうになった場所だね。  僕はあの日……驚いて駿を突き飛ばして逃げてしまった。  本当に、ごめん。  残された駿がどんなに傷ついたか。  今なら分かる。今なら考えられるよ。  理由も話さず、あの日を境に駿の目の前から忽然と消えて、ごめん。  あんなに苦い想い出なのに……  僕はね、ずっと、あの日の続きを待っていたんだ。  離れていた間、それなりに女性と付き合ってみたが、いつも長続きしなかった。  理由は一つ。  いつも駿のことを思い出していたんだ。  ……まだ?  瞼を閉じてどのくらい経った?  どうしてキスしてくれない?  僕は待っているのに…… 「ちゃんとしたい」と言ったくせに、躊躇っているのか。  僕はしたい、駿に触れたいよ!  だから……僕から……求めてもいい?  江ノ島の岩場の陰。  僕は駿の肩を掴んで、背伸びをした。  そして……夕日を挟むようなキスをした。  甘い――

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