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ふたりの初恋 1

 幼馴染みで同級生。  そんなありふれた関係が、二人の恋の出発点だった。  僕たちの恋は、ずっとずっと両片思いだったんだ。  それを口づけで伝え合った初デート。    さっき駿と重ねた唇を、そっと指で撫でてみた。  すると以前とは全く違う感情が、じわじわと湧いてくる。  ただの男の唇だと、あの時は鏡の前で首を傾げたが、今日は違う。  ここは……重ねれば甘い疼きが芽生える場所になった。  そうか……ここからスタートするんだね。  そして、この先もずっと続くんだね。  初恋は、もう僕だけの物ではなく、駿だけの物でもなくなった。  いよいよ『僕らの初恋』が始まるんだね。 「待てよ。俺たちもう社会人だ。高校生でもあるまいし、このまま真っ直ぐ帰ることはないよな」 「確かにそうだね」  駅の改札を前に、駿がハッとした表情で顔をあげた。 「想は腹、減らない? なんかほっとしたせいか……滅茶苦茶減った」 「あ……僕も一緒」 「海を見渡せるいいカフェがあるんだ。そこでビールとしらすピザなんて、どうだ?」 「美味しそうだね。行くよ」 「そこさ……いつか想を連れていきたいと思っていた店なんだ」  駅の向こうの道は、外灯が少なく暗かった。  肩を並べて歩けば、自然と触れ合う手。  そのままキュッと駿に握られた。  心を掴まれた。  少し身体に力が入ってしまうと、駿が心配そうな声を出した。 「ごめん。外で繋ぐのは、いやか」 「いや……駿と手を繋ぐのが懐かしいなって」 「そうか、これからは懐かしくなくなるよ」  駿が一旦手を離し、今度は指と指を絡ませてきた。  あ……ドキドキする!  1本1本絡め取られていくと、駿とキスした時みたいに、また心臓が早鐘を打ち出した。 「しゅーん、僕……ドキドキが止まらないよ」 「想……俺もだ」  

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