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もっと、傍に 2

「想?」  俺の肩に頭をもたれさせた想の様子が、変だ。 「……うっ」    辛そうな声が小さく漏れると同時に、体重がズシッとかかってきた。 「想……もしかして、また貧血か」 「ごめん……少しだけ……このままでいて」 「大丈夫か、俺にしっかり掴まれよ」  こんなことが昔あった。  あれは江ノ電の駅のホームで……高校時代のことだ。  夕焼け色に染まるホームで俺の肩にまわされた細い腕、頬を掠めるサラサラな髪が忘れられない。  あの瞬間、俺の心臓は思いっきり跳ね出した。  トクン、トクン!  時計の秒針のように、恋を刻む音が聞えた。  あれが、想への初恋を意識した瞬間だ。 「しゅん……ほっとする」  あの日と同じ、いや……それ以上に甘く、耳元に届く安心しきった吐息。  至近距離で大人になった想と目があった。  以前は手が届かないような透明感があった想は、誰もを魅了するいい男になっていた。    あの日願った、生まれたての初恋を思いっきり抱きしめたいという夢は叶った。だから今度はその初恋を育てていく番だ。  想、俺たちはもう子供じゃない……もう一歩踏み出さないか。 「馬鹿だなぁ、疲れが溜っていたのに酒を飲んで」 「しゅ……ん、どうしても……断れなかったんだよ」  想が無意識に甘えてくれるのが嬉しくて、俺のスーツの端をギュッと握る様子も愛おしくて溜らない。 「想……そんな状態で、鵠沼まで帰れるのか」 「もう電車に乗らないと……江ノ電は終電が早いから」 「じゃあ送っていくよ」 「そんなことしたら、駿が帰れなくなるよ」 「じゃあ泊まって行くか」 「え……」  言い出したくせに、呼吸が止まりそうだ。 「あ、いや、その……具合が悪そうだから。明日は俺の部署と早朝オンラインミーティングがあるって聞いたぞ。だったら駅前のビジネスホテルにでも泊まった方がいいんじゃないか」  言い訳がましく、しどろもどろになっていく俺。  格好悪いな。 「想、もう一度顔を見せて見ろ」 「ん……」  蒼白な顔、小刻みに震える手元。    やはり放っておけない。 「来いよ」 「しゅ……ん……っ、で、でも」  想が俺を怖がっているような気がして、パッと手を離した。 「ごめん。何もしない。ただ……想が心配なだけだ」 「あ……ごめん、そうじゃなくて……泊まるなら……駿も一緒がいいなって……」 「はぁ?」 「あ……ごめん。何もしないから」  想が真っ赤になって顔の前で手を振るのが可愛くって、思わず声を出して笑ってしまった。 「ぷっ」 「駿……僕……何を言って……あぁ……恥ずかしいよ」 「んなことない! だが俺たち、幼馴染みで同級生の期間の方がまだ長いから……こういう会話、ちょっと照れ臭いな」 「うん……」  

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