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もっと、傍に 5
「しゅ……しゅん……っ、ちょっと待って……」
ホテルの客室で駿に抱きしめられた瞬間動揺した素振りを見せたくせに、心の底では安堵していた。
僕は……やっぱり駿が傍にいると、ほっとするよ。
子供の頃から、ずっとそうだった。
たぶん転校初日に一緒に帰ってくれた時から。
しかし成長するにつれて、駿には駿の世界があることをひしひしと感じたんだ。サッカー部で頑張る溌剌とした駿と、相変わらず内気で軟弱な僕では、雲泥の差があったからね。
駿との距離……縮めたいな。
いつか再会出来たら、もっと傍にいくために。
ここ数年、それが僕の目標だった。
いつも駿に頼り切った状態から脱却しようと、向こうにいる間はひとりで頑張ってきたのに、結局何も変わっていなかったのかな?
いや、違う。
これは後戻りしたのではなく、先に進んだんだ。
何故なら、こんなにも僕の胸が高鳴っているのだから。
駿、教えて欲しい。
キスの次は何をしたらいい?
僕はどうしたらいい?
海外ではゲイのカップルと話す機会もあったし、単独でストレートに恋人にならないかと誘われることもあったよ。もちろん丁重にお断りしたけれどね。
彼等は僕の前で気兼ねなくキスはしていたけれども、その先は未知の世界だ。漠然とした知識はあっても、それが現実に可能なのか半信半疑だ。
未知の世界は怖かった。
でも……駿となら踏み出してみたい。
そこまでの覚悟を持って、僕は帰国したんだよ。
「明日もこれを着るんだろ。皺にならないようにしないと」
この言葉をきっかけに、僕の意識はある一点に向かっていた。
あぁ駄目だ……まともに駿の顔を見られない
俯いた僕の身体は、燃え上がっていた。心は平静を装って堪えても、身体の高まりはどうやっても収まらない。
駿も……同じだよね、きっと。
ベッドに寝かされ、キスを沢山してもらった。
駿とのキスは、大好きな事の一つになっていた。
甘くて甘くて、蕩けそう。
その後、初めて耳朶をペロッと舐められ、驚いた。
そんなところ……っと思ったのに、僕の身体は過敏に跳ね、ピクピクと反応し出した。キスも今まで一番深くなり、どこで息継ぎしたらいいのか分からない。
頭を振る度に酔いが回って、とろんとしてしまう。
身体は重たいのに、どんどん張り詰めていく。
僕の腰を抱きしめていた駿の手が、そっと臀部に下りてきた。
駿、駿……少し待って……この先は……
口には出せなくて、思わず駿の首にしがみついてしまった。
いい歳をして、まだ意気地なしだ!
そのタイミングで駿が僕の上から下りて、横に並んでくれた。
「あ……どうして?」
駿はけっして急かさない。
でも今、駿がどんなに我慢しているか、僕は知っている。
同じ男だから、分かること。
「手を繋いで眠ろうか」
「駿……」
「焦らずゆっくりいこう」
「ごめん……ありがとう」
ところが、全然眠れない。
気になって気になって仕方が無い。
駿、本当にそれでいいの?
駿、それじゃ……僕たち少しも進めないよ。
「駿……起きてる?」
「まだ寝てなかったのか」
「眠れなくて。あの……駿のここ……今、どうなってる?」
そっと駿の股間にそっと手を伸ばすと、駿が目を見開いて飛び上がった。
「そ、想……そんなとこ……触れんなぁー!」
「でも……僕も……男だから……同じだから……」
「あー、もう、想は……っ」
もう一度駿にしっかりと抱き寄せられた。
下半身同士が密着するほど、きつく抱きしめられた。
「今日は触れない。我慢する……俺さ……この先は想が素面の時にしたいんだ。想……今にも寝ちゃいそうだしな」
「そんなことないけど……しゅ……駿……それでいいの?」
「……本当はまだ少し怖いだろう?」
「……う……ごめんね」
図星だった。
さっきから身体が重くて重くて沈みそう。
「やっぱりな。今日はこれでいい。布越しに想の高まりを感じるのも初めてだしな!」
こんな状況で到底眠れないよと苦笑したのに、駿の言う通りだった。
酔いが回った僕は、いつしか睡魔に襲われて、微睡んでいた。
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