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ラブ・コール 13
鍵を閉めた途端、僕たちは刹那的に抱擁し、唇を貪り合った。
これは始まりの合図だ。
「と、とにかく中に入ろう」
「う……うん」
僕の唇はしっとりと濡れて、熱を帯びていた。
スリッパに履き替えて二人で廊下の扉を開けると、パーッと明るい光が差し込んで来た。
窓一面に広がるのは、葉山の海と空。
明るい海がキラキラと水面を輝かせて、歓迎してくれているようだった。
「すごいな! 圧巻のオーシャンビューだ」
「良かった。駿と海を眺めながら、ゆったりと過ごしたくて」
「あぁ海のブルーを基調とした内装も落ち着くし、想らしいセレクトだよ」
「気に入ってくれた?」
「もちろんだ、想……」
カーテンは閉めなくてもいい。
最上階なので、誰にも見つからない。
空と海、輝く太陽しか、僕たちを知らない。
夜には星と月だけが、僕たちを見つけるだろう。
窓辺に立つと、駿が背後から僕を抱きしめてきた。
「想……ゴメン。夜まで待てない」
「うん……僕もだよ」
窓からの光を背負って、僕は駿の胸に飛び込んだ。
駿の存在は、僕に深い安らぎを与えてくれる。
ここが好きだ、駿が好きだ。
「想は、いい匂いだな」
「そ、そうかな?」
僕も駿の匂いと体温を感じたくて背中に手を回して、しがみついた。
「続きをしても?」
「うん……しよう」
再び顎を掴まれて、何度も何度も唇を押しつけられた。
優しく、深く……切なく、熱く。
「ん……っ……んっ」
問いかけるような、訴えかけるような、熱心なキスに応じていると、駿の大きな手が襟元に伸びてきた。
「あっ……」
そのまま性急にスーツの上着を脱がされ、白いワイシャツに紺色のネクタイ姿のまま、もう一度深く抱きしめられた。
もっと近くに、駿の身体を感じる。
「想、俺……少しずつ歩み寄るから、怖がるな」
「ん……」
大きな手で胸元を探られた。
「あ……」
熱心に彷徨う手は、まるで捜し物をしているようだった。
「ここか」
「あっ」
普段はついているのを忘れている小さな突起を見つけると、そこを熱心に弄りだした。
「あっ……いやっ……」
「嫌か」
「……変な……感じ……」
僕の身体は熱を孕みだしていた。ワイシャツの生地に擦れる胸の突起は少しずつ芯を帯び、ツンっと上を向いて尖っていくようだった。
「あ……あっ……駿、そこは……」
もう頼りない声しか出てこない。
自分でも驚く程の甘い声だった。
「想……やっぱりここが気持ちいいんだな」
駿に覗き込むように問われて、頬を染め正直にコクンと頷いた。
「じゃあ……もっと感じてくれ」
再び口を塞がれ、今度は胸全体を大きく揉まれた。
僕は男だ。そこは膨らみの欠片もない平らな場所なのに……どうして?
どんどん気持ち良くなっていくよ。
「すごく……気持ちいい」
あの日のように言葉に出して伝えると、駿の喉仏が大きく上下し唾をゴクンと嚥下する音がした。
「溜らないな。その声……素肌に触れてもいいか」
「ん……いいよ」
駿は僕のシャツをスラックスから引き出し、裾からそろりと手を入れてきた。
あぁ、この先は未知の世界だ。
素肌を這う手にゾクゾクとする。
「見つけた」
「あぁっ」
乳首の先端を指先で撫でられると、くらりとした。
キュッと摘ままれると、下半身がブルブルと震えた。
「ヘン……そこ……ヘンになる」
「男でも感じるんだよ。大丈夫だ」
「あぁっ」
「おっと」
あまりの羞恥にふらっとよろめくと、駿は僕の手を優しく引いて窓際のベッドに座らせてくれた。
「想、本当に大丈夫か」
「ん……」
こんな状況でも、僕の体調を気遣ってくれるなんて。
「僕はね……もう昔ほど病弱じゃないよ。だから駿とちゃんと愛し合えるんだ」
駿は……感極まった表情でスッと僕の前に跪いて、僕の手に額を当てて呟いた。
「想、ここまで来てくれて……ありがとう」
「それは僕の台詞だよ……僕たち……もう、このまま、ひとつになろう」
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