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初恋前線 2
人気のない海岸で、駿と何度もキスをした。
海風に吹かれながら重ねた唇には、僕たちの愛が溢れていた。
それにしても短冊にあそこまで直球な願い事を書いたのは初めてで、照れ臭かったよ。
いつも、ふんわり、やんわりとした願い事ばかりだったから。
あんなに具体的な願い事をしたの、初めてだ。
僕も男なんだな。
駿が欲しいよ。
今すぐにでも。
駿も同じ願いを書いてくれて、嬉しくなった。
僕たちは、これでいい。
もうすれ違わないために、真っ直ぐに歩んでいる証しだね。
「そろそろ帰るか」
「ん……」
「さっきの話は本気だ。有言実行する」
「うん、僕も協力するよ」
「サンキュ! 早めに越してくるよ」
駿……
本当に、またここに戻って来てくれるの?
それって僕にとっては、最高に嬉しいことだよ。
駿が近くにいてくれる。
それが、どんなに心強いか。
「そろそろ帰るね」
「遅くなってごめんな。そうだ、想のお母さんの調子、どうだ?」
「うーん、お父さんがいない生活にまだ慣れないみたいで、とにかく元気がないんだ」
「そうか……それは心配だな。そうだ今度うちの母を誘ったらどうだ? 母も会いたがっていたし」
「ありがとう! きっと喜ぶよ」
母は相変わらず人見知りな性格で、内気な人だ。
父と僕、駿と駿のお母さん。
決まったメンバーの中では楽しく明るく過ごせるが。
父が赴任してしまってから、一日中家でぼんやりしていることが多いので心配だ。行き先が情勢不安定な場所でなかったら、一緒に行った方が良かったのかもしれない。父が近くにいるといないとでは、雲泥の差だ。
かつてのアメリカ赴任では、母も頑張っていた。慣れない土地、慣れない言語にも関わらず、僕が熱を出せば病院に連れていってくれて、僕の学校や進路のことでもいつも積極的に関わってくれたのに……今は糸が切れたように覇気が無い。
駿と会う時間も大切だが、母も大切にしたい。
だから駿がこっちに引っ越して来てくれるのは、僕にとって本当に嬉しいことだった。
「駿……ごめんね。僕は……親離れ出来ていないのかな?」
「馬鹿、そうじゃないだろ。そんなことで謝るな。俺はお母さんを心から大切にする想が好きなんだ」
「あ、ありがとう。僕……母のことが心配で……」
「それでいい。想の気持ちは素直に置いて欲しい」
心のままに突っ走り、欲望のままに抱き合って、快楽に溺れて過ごす。
そんな燃え上がる炎のような恋もあるのだろう
「僕たちの初恋をこのまま……続けても?」
「あぁ! それでこそ俺が好きになった想だ。俺、想のお母さんのことも大好きだよ。最初に家にあげてくれた時から、俺を全面的に信頼してくれたのが忘れられない」
「駿は真っ直ぐで清々しかったから。今も……昔も」
「想は俺を有頂天にさせる天才だな!」
「……そ、そんな。あっ……」
腰を今一度深く抱き寄せられる。
重なる下半身、スラックス越しに伝わる熱。
情熱の灯を感じて、甘い吐息が生まれる。
「そのためにも今回は俺が歩み寄りたいんだ。それにやっぱり湘南が落ち着くんだよ。無機質な都心の独身寮は息が詰まる。海風と砂浜がないと身体が……辛い」
「ん……待ってるよ。しゅーん、もう……戻ってきて」
「想、可愛いことを、約束する。ここに戻ってくると」
僕は今日も……駿限定で甘えてしまう。
駿は……僕の全てを知り、僕を預けられる人だから。
「駿がいてくれてよかった。この世で巡り逢えて良かった」
「今日は壮大だな」
「七夕だからね」
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