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絆 1
今日は最初に前置きをさせて下さい。
のんびり、ほのぼのと書いて来た社会人編ですが、ここで2年後にワープします。次の節目に向かって大きく展開させますので、宜しくお願いします。
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お父さんが単身で海外に赴任してから、あっという間に2年が経っていた。
その間、駿と僕の初恋は順調に育っていた。
あれから料理のレパートリーもかなり増え、仕事も順調だった。
お父さんとのFAXを利用した文通も、続いている。
お母さんとのラブレターも、もちろんね。
週末には駿のマンションで愛し合い、朝はいつも交差点で待ち合わせをして一緒に通勤するのが、僕らのルーティーン。
僕は大きく体調を崩すこともなく、平穏無事に過ごせていた。
平和で幸せでのどかな日々を、満喫していた。
11月下旬。
いつもより、ひんやりとした朝のことだった。
朝、自室で普段通りネクタイを締めていると、ガシャンと何かが派手に割れる音がした。
慌ててキッチンに駆けつけると、お母さんがテレビの前でお盆を持ったまま固まっていた。
足下を見るとマグカップが割れたらしく、床に砕け散っていた。
「お母さん、怪我はなかった? 今、片付けるから」
「……」
「どうしたの?」
お母さんの様子が明らかにおかしい。怪訝に思い視線を辿ると、朝のニュースが海外での事故の速報を、重々しく伝えていた。
『速報・エジプト・カイロ近郊にて現地時間の23時、50代の日本人男性が乗車した車が対向車と衝突し、死傷者が出ている模様です』
ニュースのテロップに、僕の手もピタリと固まった。
カイロ?
お父さんのいる場所と離れているが、近い場所だな。
他人事とは思えず、事故に遭った方の無事を心の中で祈った。
するとお母さんが何かを思いだしたように叫んだ!
「そ……想、どうしよう! お、お父さん……昨日からカイロで仕事だって言っていたわ」
「えっ!」
「想……お父さんは無事よね?」
返事をしようにも、喉がカラカラで声が出なかった。
「ど……どうしよう……」
「お母さんしっかりして! 正しい情報を聞いてから判断しないと」
「そ、そうよね。お父さんに電話してみて」
「うん」
何度もお父さんに国際電話をかけるが、応答はない。
FAXも送ってみたが、返事もない。
どうにかして安否を確かめたいのに……
どうか折り返し電話をして下さい。
元気な声を聞かせて下さい。
「想……お母さん、どうしたらいい? こんな時どうしたらいいの? あぁ……あなた」
「お母さん、しっかりして」
そこに鳴り響く電話。
嫌な予感がする。
「僕が出るよ。もしもし……」
震える手で応答すると、お父さんの会社からだった。
「白石部長息子さんですか。先程のニュースをご覧になりましたか」
「……はい」
「残念ながら白石部長が乗車している車でした。現地の情報が錯綜しているため……安否が分かりません」
「えっ……」
お母さんも僕も、絶句した。
情勢が不安定な中東の国への赴任。
現地スタッフを厳選しているらしく、お父さんは多忙過ぎてこの二年一度も帰国出来なかった。僕たちが行こうとしても「危ないから来るな」の一点張りで、ずっと生身のお父さんに会えていない。見送った空港が最後だった。
砂漠に放り投げられたような荒寥《こうりょう》たる胸の内だ。
お父さん、どうか……どうか無事でいて下さい。
しっかりしろ想!
こんな時こそお母さんを守るのが、僕の役目じゃないか。
お父さんに頼まれたのに……僕の手足はガクガク震えるばかりでちっとも役立たない。
パニックになった。
今までにない追い込まれた状況に、息が苦しい。
お母さんと僕はその場に蹲ったまま、動けなくなった。
こんな時、どうしたらいいのか……
ふと……昔、駿が教えてくれた言葉を思い出す。
(想、辛かったらすぐ俺を呼べ。絶対駆けつけるから。想を助けるから)
駿……駿……
心の中で必死に駿を呼ぶと、インターホンが鳴った。
ビクッと震えると「想、いるか」と駿の声がした。
「あ……駿、しゅーん」
足がもつれて上手く歩けない。何度か壁に肩をぶつけながら玄関を開けると、血相を変えた駿が立っていた。
「想、大丈夫か。朝のニュース見て気になって……想、いつも時間に遅れないのに来ないから、心配になって飛んで来た」
「しゅーん……ど、どうしよう? 車にお父さんが乗っていたみたいなんだ。会社から連絡があって……情報が錯綜しているから……安否が分からない」
そこまで話すと立ちくらみがして、駿に抱き抱えられる。
「想、想、しっかりしろ! 俺にもたれろ、深呼吸しろ!」
「駿……怖い……」
「大丈夫だ! まだ何も分からない。悪い事ばかり考えるな!」
駿の声が、僕を励ましてくれる。
駿の手が、僕を支えてくれる。
僕はひとりじゃない。
お父さんと約束したことを守る時が来たんだ。
あとがき(不要な方は飛ばして下さい)
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突然の急降下でしたよね。最初から決めていた展開ですが、こういう展開にする時は緊張します。スタンプやスターも激減覚悟で書くので、作者もしんどいです💦 どうかハッピーエンドを祈って下さい。ハッピーエンドに辿り着けるように、頑張って書いていきます!
以下、他サイトの情報で、申し訳ありません。
このタイミングで2万スター達成しました!
いつもありがとうございます。
本編切ない展開の癒しとなるように、甘い内容のスター特典を書きました。
10スター特典『Sweet Potato Apple Pie』です。
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