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聖なる初恋 9

 俺たちはクリスマスプレゼントを交換しあった。 「中身は何だろう? ワクワクするな」 「駿から開けてみて」 「おぅ」  中身は、肌触りの良い起毛した生地の…… 「パジャマか」 「うん、そうだよ。英国製のフランネル生地で作られているんだ」 「すごく上等そうだ。あっ、これって銀座のテーラーのオーダーなのか」 「うーん、セミオーダーというのかな。ある程度体型を考慮して作ってもらったので着心地がいいはずだよ。気に入ってくれた?」 「当たり前だ。想のは? 想のも買ったのか」 「え? 僕の分は買ってないよ」  想がキョトンとしている。    あぁ……俺の恋人は相変わらず謙虚過ぎる。 「今度、俺も想にパジャマを買ってやる!」 「ありがとう。今度ね……あの、駿からのも開けていい?」 「あぁ」 「わぁ手袋だ。暖かそう!」 「俺とお揃いにした」 「そうか、ペアなんだね」  想が頬を赤くして、破顔する。 「嬉しいよ。駿……とても嬉しい」  寒がりで風邪を引きやすい恋人を暖める物を贈りたかった。 「想、そろそろいいか」 「うん……続きをしよう」  俺は想の手を引いて、再びベッドに寝かせた。  窓辺に置かれたベッドが、二人分の体重を受け止めて軋む。  二人の呼吸の音しか聞こえない世界に入っていく。  キスを繰り返すうちに薄い胸を上下させ、愛撫に震えていくのが可愛い。  2年間抱き続けても、いつも初めてのように恥じらいを見せる身体をじっくりと組み敷いていく。 「あっ……んっ……」  胸のつぶらな突起は、いつも指先と舌先で丹念に愛撫してやる。 「そこ……やっ」 「コリコリになっている。これだけで、こんなになって」 「……駿が……したんだ」 「嫌か」 「……あっ……あっ……」  想の細い手首をシーツに縫い止めて体中に愛撫を広げていくと、グズグズに濡れていく。     「気持ちいいか」 「うん……すごく……蕩けそう」 「よく言えたな」 「そろそろ……?」 「あぁ、また想の中に潜りたい」 「うん……いいよ」  想がそろりと身じろぎして、ほっそりとした太腿を震わせながら大きく足を開いて、受け入れる体勢を取ってくれる。  想にしては積極的な仕草に、また惚れる。 「好きだ、好きだ……好きだ」 「駿……僕も同じだけ好きだよ。好きで……好きで……大好きだ」  甘ったるい言葉は、惜しまない。  愛を伝える人が目の前にいるんだ。  俺はいつだって初恋前線を牽引していくのさ! 「んっ、んっ……あっ……あっ」  ズンと突き上げる度に零れる嬌声に、また胸が高鳴った。  日付を跨ぐまで、俺たちは何度も抱き合った。 「メリークリスマス、そして、おやすみ……想」  腕の中で……今はもう疲れて眠る愛しい人。  その耳元で甘く囁くのも、愛の言葉。 **** 「そろそろか」 「そうね、昼食を一緒に食べようと言ってあるから、きっともうすぐよ」 「……待ち遠しいな」  想のいない食卓を眺めながら、柄にもないことを呟いてしまった。   「私は、いつも待たせてばかりだったな」  クリスマスもお正月も仕事を優先して、家族を待たせてばかりだった。   「たまには待つのも悪くないでしょう?」 「由美子、いつも待っていてくれてありがとう」 「これからは、あなたと一緒に待てるのね」  12時15分前、電話がかかってくる。 「お父さん、今から駿と帰るね」 「あぁ予定通り戻って来てくれるのか」 「当たり前だよ。お父さんとお母さんとも過ごしたいんだ。それに駿も張り切っているよ」  明るい息子の声に、心が和んでいく。 「どうだった? 楽しかったか」 「うん。お父さん、ありがとう! 僕は幸せだよ」 「そうか、それを聞いて、お父さんも幸せだ」    律儀で真面目な息子は、いつも約束を必ず守ってくれる。  駿くんと今日も二人きりで過ごしてもいいのに、一緒にクリスマスランチを取りたいと言ってくれる優しい気持ちが嬉しかった。 「由美子、想は『灯《ともしび》』なんだな。寒い冬に見上げる街灯のように、私たちをあたたかく照らして優しく包んでくれる」 「えぇ、本当に優しい子。あなたに似て時々凜々しい所もあって……私たちの最愛の息子よね」  息を切らせて、二人は12時ジャストに我が家に戻ってきた。 「お帰り、想」 「ただいま」 「お帰り、駿くん」 「あ……ただいま! お父さん」  駿くんも既に私の息子の気分なので、思わず「お帰り」と言ってしまった。すると駿くんも当たり前のように「ただいま」と言ってくれた。それが嬉しかった。 「さぁクリスマスランチにしましょう。お腹は空いている?」 「ペコペコです。俺、手伝いますよ」  駿くんが率先してキッチンに飛び込む。 「想はいいから、お父さんの所で待っていろよ」 「あ……うん」  よしよし、想の体調をさり気なく気遣ってくれる優しい子だな。  想がそっと私に話しかけてくれる。 「お父さん、昨日はお母さんと何をしていたの?」 「あぁ、古いアルバムを見ていたよ」 「どんな?」 「想の小さい頃だよ」 「もしかして駿と写っているのもあった?」 「あったよ。想の部屋で二人が可愛く眠っている写真だ」 「えっ、そんなの見たことないよ?」  想が目を見開いて驚いている。  それもそうだろう。  あれは私の隠し撮りだから。 「秘蔵の宝物だ」 「恥ずかしいよ、お父さんってば」 「はは、今見せてあげよう」  まだ小学生の二人が頬を寄せ合ってスヤスヤ眠っている。  天使のような寝顔だ。 「いつの間に……」 「あの頃はいつも帰りが遅くて……駿くんが泊まってくれた時、あまりに可愛くて撮ってしまったんだ」 「お父さんは、こんな風にいつも僕たち見てくれたんだね」 「あぁこっそりは見ていたようだ。これからはしっかり見守らせてくれ。まずは……」  そっと息子の襟元に手を伸ばし、首元のボタンを一つ留めてやった。 「?」 「これは、お母さんには刺激が強いかもしれないからな」 「……あっ!」  想は頬を染めて、慌てて首元を手で押さえた。  若い恋人同士がクリスマスイブに会って何をするか……それを詮索するほど野暮ではない。 「ははっ、これは男同士のヒミツだな」 「やっぱり、恥ずかしいよ」  耳朶を赤く染めて俯く息子の姿は、今日も最高に可愛かった。       

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