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聖なる初恋 11

 早速俺たちは、想の部屋でパジャマに着替えることにした。 「駿、どうかな?」 「可愛い!」  大人しくて優しい顔立ちの想には、暖色系のパジャマがよく似合っていた。  顔色が良く見えるし、まるで熟れた果実みたいだ。 「やっぱり冬は赤だよな~ 想、美味しそうだ」 「そ、そうかな? さっきチラッと話題に出ていたけど、小さい頃、同じ柄のパジャマを持っていて大好きだったんだ。着ていると元気になれる気がして」 「それ分かるよ! 赤を身につけると、やる気がアップして積極的な行動を取れるし、元気になる活力を感じるから、健康になれそうだもんな!」  想を抱きしめ、胸元に埋めてやった。  昨日は何度も一つになれたから、まだ身体が繋がっているみたいだ。 「しゅーん、赤は繋がりの色なんだよ」 「ん? 繋がり?」 「うん、身体を流れる血の色と同じだから、身体の組織を繋げて生かしてくれる命の色だよ。あっ……もしかして、あの時……」  何か思い出したのか、想の顔色がサッと変わった。 「どうした?」 「あれは夢ではなかったのかな? お父さんが僕を助けてくれたのは」 「夢?」  ベッドに座らせ落ち着かせてやると、想がぽつりぽつりと幼い頃見た不思議な夢の話をしてくれた。  5歳の想はクリスマスイブの晩に喘息の大発作を起こし、しかも高熱も併発し生死を彷徨ったことがあると。  そこまで危ない状況に陥っていたとは……  聞いていて、ぞっとした。  その時、夢でお父さんに会って、家まで手を引いて連れて帰ってもらえたと。 「お父さん……あの時、足を怪我していたんだ。血がポタポタ流れて痛そうだった。だから僕も頑張って歩いたよ。胸が苦しくて辛かったけれども、お父さんも痛む足を引き摺って頑張っていたから、ゆっくりゆっくり二人で支え合って戻って来たんだ。この世に!」  話の途中から、想は頬を静かに濡らしていた。 「想、その時夢で会ったお父さんは……もしかしたらこの前危篤だったお父さんだったのかもしれないな。だとしたらお父さんが想を救い、想もお父さんを救ったんだ」 「僕が?」 「あぁそうだ。想だから出来たんだ。想はすごいよ、最高だ」  腕の中にいる想に、感極まって何度も何度もキスをしてしまった。パジャマ姿の想が可愛くて、止まらなくなった。 「あっ……んっ……」 「想、想……元気なってくれて良かった。ここにいてくれてありがとう」  夢中でキスをしていると、廊下から声が聞こえた。 「そろそろケーキを食べましょう」  そこでようやく我に返った。 「想、大丈夫か」 「う、うん」  二人とも体中が火照っていた。 「駿……大丈夫?」 「想の方こそ」 「ん……あっ……これは……駿お得意の『シバラクオマチクダサイ』状態なのかな」  想がサラサラな前髪を揺らして、甘く微笑む。  うぉ~ 煽るな。 「その台詞は、俺の専売特許だぞ」 「そうなの?」 「いや、想ももう同類だな」 「くすっ、駿と一緒なら何でも嬉しいよ」 「いいのか~ こんなこともされちゃうぞ」  そっと下半身の膨らみを撫でてやると、想が真っ赤になった。 「もっ、戻れなくなるよ!」  俺たち男同士だ。  欲情したら勃つし、興奮したら欲しくなる  シンプルに出来ているよな。  お互いの身体の状態が手に取るように分かるが、嬉しい。 **** 「随分、遅かったね」  おっと、つい野暮なことを言ってしまった。 「あ……えっと、その……」  想はドキッとした表情で、しどろもどろになっていく。  こういう素直な反応は相変わらず可愛い。 「ははっ、パジャマ、よく似合っているよ」 「お父さん、また買ってくれてありがとう」 「あぁ、お父さんも気に入ったよ」 「お母さんと同じにしちゃった」 「ペアだな」 「うん!」  想が贈ってくれたものは、赤と白のタータンチェック柄のとても上質なパジャマだった。 「仕立ててくれたのか」 「うん、セミオーダーだけど東銀座のテーラーで」 「とても上質な生地と丁寧な縫製だ」 「とても素敵な店主なんだ」 「なぬ? 何者だ?」 「あ、えっと英国で出逢った方で」 「なぬ? それは一度お父さんも挨拶しないとな」 「お父さんってば」    あまりに可愛い息子なので、つい過保護になってしまう。  もうとっくに成人した息子なのに……  反省していると、駿くんが話し掛けてくれた。 「お父さんのスーツ、みんなで見立てるのはどうですか」 「……あぁ、駿くんも来てくれるのか」 「はい!」  駿くんは本当にいい子だ。  爽やかで明るくて、好感が持てる。  想は優しい心根の男と恋に落ちたのだな。  彼を知れば知る程、実直さに惹かれ、想を任せられるのはこの男しかいないと確信が持てる。 「君も一緒がいい」 「ありがとうございます」  おや? 駿くんを見上げると、首筋に赤い痕が一つ、二つ……  なんと、三つも!  あれは、想がつけたということになるのか。  私は見なかったふりをして、心の中で密かに喜んだ。  想も受け身なだけではない。  積極的に駿くんを愛している証拠だ。  一人の男として、彼を愛しているのだ。  

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