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第12話
「昂平と理音ってホント付き合ってねーの?なんかすげーお似合いなんですけど」
突然後ろから、佐倉先輩にそんなことを言われた。
「はぁ!?ちょ、冗談やめてくださいよ!俺達はただの幼馴染です!」
「突っ込むところが違う、理音。ただの幼馴染の前に、俺たちは男同士だろうが」
「あ、ああ、そう!そうですよ!俺には可愛いガールフレンドがたっくさんいるんです!なんで男のコイツと付き合わなきゃならないんですか!」
「ムキになって否定するところがあやしいな~」
「はぁ!?」
何言ってんだよ、佐倉先輩!!
んなこと言って、チョットでも昂平に怪しまれたらどーすんだっ!!
「佐倉先輩、あんまり理音をからかうと嫌われますよ」
「はいはい、昂平君の大事なお姫様をいじめてすいませんね」
「~~~っ!!」
もしかして朝練の前の会話、聞かれてた!?
「もう知らねぇっ!!」
恥ずかしさやら情けなさやらで、俺は昂平の腕を振り切ると早歩きでシャワールームへと向かった。まだこんなスタスタ歩ける体力残ってたんだな俺。
「……」
誰と誰がお似合いだ。何がお姫様だ!昂平のお姫様はきっと俺じゃなくて、可愛い女の子だ。そんなの分かってる、ちくしょうめ。
「おい、待て理音!」
昂平が追いかけてきた。何で追いかけてくるんだコイツは。まあ、目的地は同じだけど。
「なんだよ!急ぐなら先に行けよ!」
「そんなムキになるな。佐倉先輩は俺たちをホモ扱いしてからかいたいだけなんだから」
「わかってるよ!うるせぇな!」
うるさいのはどう考えても俺の方だけど、この場合「口煩い」って意味にしてくれ。
「なんでそんな怒ってるんだ」
なんで?そんなの決まってる。
「お前が俺をお姫様なんて言うからだろ!!」
何で俺は、苛ついてると思ったことをすぐ言ってしまうんだろうか。毎回反省しているのに、全然治らない。
案の定、昂平はあっけにとられた顔をして俺を見ていた。
「俺に女扱いされたことが嫌だったのか?」
そうじゃない。
それだけが理由じゃないけど。
「……そーだよ。完璧綺麗系イケメンの俺のどこがお姫様に見えるんだよ!バレーのしすぎで目まで筋肉になってんじゃねぇのか!?」
ああ、なんで俺はこんな可愛くないことばっかり言ってしまうんだろう。昔は素直に『こーちゃん大好き』なんて言えてたのに。
一体、いつからこんなひねくれちまったんだろう。こんなんじゃ、いつ昂平に呆れられるか嫌われるか分かったもんじゃない。
「すまん、俺が悪かった。二度と言わない」
「……………」
「急いでシャワー行くぞ。ホームルーム始まる」
ぽん、と頭の上に手を置かれたと思ったら、昂平は俺を追い越してシャワールームに向かった。1メートルくらいの距離を開けて、俺は無言で昂平に着いていく。
何で昂平はいつもいつも俺を甘やかすんだろう。そのたびに俺は、泣きそうになるのに。
※以下、3年佐倉と1年進藤の会話
「ホント、実際の理音ってRIONのイメージと180度違うよなあ、ガキ臭すぎっつうか。RIONはク―ルビューティーっつかセクシーっつかエロいのにな~」
「俺はいつもの猫田先輩のほうがいいです。特に犬塚先輩の前だとツンデレで可愛いですよね」
「は?何?ツンデレ?」
「佐倉先輩は猫田先輩をいじめすぎですよ。バレー部辞めたらどうしてくれるんですか」
「だーってアイツ可愛いんだもん」
「もん、じゃねーですよ佐倉先輩が言っても可愛くないです」
「お前も1年のくせに可愛くない」
「……………」
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