12 / 141

第12話

「昂平と理音ってホント付き合ってねーの?なんかすげーお似合いなんですけど」  突然後ろから、佐倉先輩にそんなことを言われた。 「はぁ!?ちょ、冗談やめてくださいよ!俺達はただの幼馴染です!」 「突っ込むところが違う、理音。ただの幼馴染の前に、俺たちは男同士だろうが」 「あ、ああ、そう!そうですよ!俺には可愛いガールフレンドがたっくさんいるんです!なんで男のコイツと付き合わなきゃならないんですか!」 「ムキになって否定するところがあやしいな~」 「はぁ!?」 何言ってんだよ、佐倉先輩!! んなこと言って、チョットでも昂平に怪しまれたらどーすんだっ!! 「佐倉先輩、あんまり理音をからかうと嫌われますよ」 「はいはい、昂平君の大事なお姫様をいじめてすいませんね」 「~~~っ!!」 もしかして朝練の前の会話、聞かれてた!? 「もう知らねぇっ!!」 恥ずかしさやら情けなさやらで、俺は昂平の腕を振り切ると早歩きでシャワールームへと向かった。まだこんなスタスタ歩ける体力残ってたんだな俺。 「……」 誰と誰がお似合いだ。何がお姫様だ!昂平のお姫様はきっと俺じゃなくて、可愛い女の子だ。そんなの分かってる、ちくしょうめ。 「おい、待て理音!」 昂平が追いかけてきた。何で追いかけてくるんだコイツは。まあ、目的地は同じだけど。 「なんだよ!急ぐなら先に行けよ!」 「そんなムキになるな。佐倉先輩は俺たちをホモ扱いしてからかいたいだけなんだから」 「わかってるよ!うるせぇな!」 うるさいのはどう考えても俺の方だけど、この場合「口煩い」って意味にしてくれ。 「なんでそんな怒ってるんだ」 なんで?そんなの決まってる。 「お前が俺をお姫様なんて言うからだろ!!」  何で俺は、苛ついてると思ったことをすぐ言ってしまうんだろうか。毎回反省しているのに、全然治らない。 案の定、昂平はあっけにとられた顔をして俺を見ていた。 「俺に女扱いされたことが嫌だったのか?」 そうじゃない。 それだけが理由じゃないけど。 「……そーだよ。完璧綺麗系イケメンの俺のどこがお姫様に見えるんだよ!バレーのしすぎで目まで筋肉になってんじゃねぇのか!?」  ああ、なんで俺はこんな可愛くないことばっかり言ってしまうんだろう。昔は素直に『こーちゃん大好き』なんて言えてたのに。  一体、いつからこんなひねくれちまったんだろう。こんなんじゃ、いつ昂平に呆れられるか嫌われるか分かったもんじゃない。 「すまん、俺が悪かった。二度と言わない」 「……………」 「急いでシャワー行くぞ。ホームルーム始まる」 ぽん、と頭の上に手を置かれたと思ったら、昂平は俺を追い越してシャワールームに向かった。1メートルくらいの距離を開けて、俺は無言で昂平に着いていく。 何で昂平はいつもいつも俺を甘やかすんだろう。そのたびに俺は、泣きそうになるのに。 ※以下、3年佐倉と1年進藤の会話 「ホント、実際の理音ってRIONのイメージと180度違うよなあ、ガキ臭すぎっつうか。RIONはク―ルビューティーっつかセクシーっつかエロいのにな~」 「俺はいつもの猫田先輩のほうがいいです。特に犬塚先輩の前だとツンデレで可愛いですよね」 「は?何?ツンデレ?」 「佐倉先輩は猫田先輩をいじめすぎですよ。バレー部辞めたらどうしてくれるんですか」 「だーってアイツ可愛いんだもん」 「もん、じゃねーですよ佐倉先輩が言っても可愛くないです」 「お前も1年のくせに可愛くない」 「……………」

ともだちにシェアしよう!