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第19話
*
目が覚めた時、俺は保健室で寝ていた。
「……?」
保健室だと分かったのは、見慣れた天井じゃなかったから。あと、独特のにおいと空気のせい。ムクリと身体を起こした。
「おう、起きたか猫田」
いきなりカーテンが開けられて、保健医の小野先生が顔を出した。
「小野先生、俺いつからここに?」
「昼休みに弁当食ってる最中に倒れたらしいぞ。犬塚が血相変えてお前抱えて飛び込んできた」
「昂平が?」
えーっと今日の昼休み、俺はいつもみたいに昂平とおかずを交換しながら弁当を食べてて
『ま、理音には今更って感じか』
ああそっか、俺、昂平に遊び人だって思われたんだっけ。
それがなんかすげーショックで、いきなり気分悪くなって……それと、すげー眠たくて……
「……ご迷惑おかけしました」
「俺は何もしてねぇよ。礼を言うなら犬塚に言っとけ。あいつマジでお前のこと心配してたからな」
「はい」
昂平はやっぱり優しいな。嘘つきの俺なんか、ほっとけばいいのに。
「それにしてもよく男をお姫様抱っこなんかできるよな。いくらお前が細くて軽いっつってもよ。馬鹿力だなアイツ」
「……!」
「女子にやったらすげえモテるんだろうけどな。犬塚って無駄にでかいし仏頂面だし、いつもお前が隣にいるからあんまりモテねえだろ。損な奴だよな」
昂平……。
「でもあいつ、多分俺以外にはお姫様抱っこなんてしませんよ」
「あん?何でだよ」
「俺、あいつのお姫様らしいんで」
眉毛を下げて、笑って言った。
「なんだそりゃ。愛されてんだなおまえ」
「冗談ですよ」
何でだろう、誰でもいいから自慢したくなった。俺が昂平に甘やかされていること。
昂平が俺だけに、すっごく優しいことを……。
「んじゃ、起きたんならホームルームが始まる前に帰った帰った」
「はい、またベッド貸してくださいね、小野先生」
「今度も犬塚にお姫様抱っこで運んでもらえよ」
「またブッ倒れろってこと!?」
今日の仕事が終わったら、昂平の家に行こう。ちゃんと誤解を解こう。幼馴染として、勘違いされたまんまじゃ嫌だから。
……別に、変なことじゃないよな?
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