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第20話

 学校が終わり、校門に行くと斎藤さんが車をつけて待っていて、仕事場へ直行した。 千歳くんの代わりの仕事は、家具カタログのモデルだった。一人暮らしの男性向けみたいな。別に千歳くんじゃなくても俺じゃなくてもいい仕事だ。疲れてたし、集中してちゃちゃっと撮影を終わらせた。 楽屋で着替えてると、斎藤さんに声をかけられた。 「いや~いきなり頼んでごめんねRION!でもすっごいよかったよ、特にベッドのとこ」 「はあ、セクシーだなんだっていうんでしょ」 「いやだって実際RIONはセクシーだしね!カメラマンにちょっと色気抑えてって言われてたのは笑ったよ」 「そんなもん、普段も出してるつもりはないんですけどねぇ」  意識してやってないものを抑えろと言われても難しいから、極力レンズから目線を外してポーズを決めていた。 「いやーでも、カメラ通したらなんかすごくセクシーっていうか……切なげな顔するよね、RION。なんかイメトレとかしてるの?」 「え」  イメトレというか、思い当たるのはひとつだけだ。まだカメラを向けられることに全然慣れなくてガッチガチだったころ、一人のカメラマンが俺にアドバイスしてくれたんだ。 『好きな人に見られてる、と思ってみてよ』 『好きな人に?』 『そう、そしたら自然にリラックスできるから』 『こう……かな?』 『……うん、うんうん!すごくいいよRION!その顔だよ!』 セクシーだのエロだのなんだのって言われ出したのは、あの撮影からだっけな。 「まあ、見る側の問題ですよ」 「そんなことないと思うけどな~」 「ってそんなことはどうでもいいから、早く帰りたいです俺。昨日からすっげー寝不足なんですよ、昼休みと午後の授業時間全部、保健室で寝てたくらい」 「ふうん、そうなんだ」  あ、帰りに昂平の家に寄るんだった。 部活はもう終わってるよな、もう8時だし。少し緊張するな……。

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