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第21話
閑静な住宅街の中。俺の家から少し手前の、昂平の家が見えてきた。
「斎藤さん、今日はここで下ろして下さい」
「え?RIONの家はもう少し先でしょ?」
「友達に用があるんで。お疲れ様でした」
車を降りて、手を振って斎藤さんを見送った。
さて。なんって、伝えればいいかな……。
『俺は女と遊んだりしてねぇ』
うーん。もうひとひねりほしい感じ。
『俺はヤリチンじゃねぇ』
いやいや、なんか直接的すぎだろ。
『俺がそーゆーことしたいと思うのは、昂平だけだから』
まさかまさか。
それが言えたら苦労しねーっつの。
「何やってるんだ、理音」
「うわああぁぁっ!?!?」
てっきり家の中にいると思っていた昂平がいきなり背後に現れて、俺は近所迷惑なくらいの声で叫んでしまった。
「ばか、うるさい」
「い、いきなり話しかけんなよ!」
「別にいきなりじゃない。うちに何か用か?」
あーびっくりした。昂平はよく見ると私服で、ここから一番近いコンビニの袋を下げていた。
「えっと……千恵さんは?」
「まだ仕事だけど。久し振りに上がってくか?」
「や、いい」
やばい、なんか緊張してきた。
「もう身体は大丈夫なのか?理音」
「え。ああ!お前が保健室まで運んでくれたんだっけ、サンキュー」
「ますますお姫様扱いしてしまったけどな」
「っ」
こいつ、もう二度と姫とか言わないって言った癖に。
「怒るなよ、理音」
どう反応していいか分からずに俯いてたら、昂平が俺の頭に手を置いた。朝とか昼だったら『何すんだ!』つって派手に払いのけるのに、なんだか今はそうしたくない。
夜だけは色々許される気分になるのは、どうしてだろう。
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