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第25話
「俺の子猫ちゃんが可愛すぎるんですが、うさぎどん」
「……うさぎどんはやめてくれぬか?わんこどん…って昔話か」
「そこはわんこどんじゃなくていぬどんじゃないか?」
「語呂が悪いだろ」
今日も俺はいつものように理音を起こしに行き、寝顔と恥ずかしそうな顔を見て満足した。インハイが近いせいか、今朝の朝練は結構きついメニューだったので、ハァハァと色っぽい声を出しながらへばる理音を、ムラムラしながら教室まで送ってやった。
もう俺は変態だって自覚したからあんまり自重しない。
今は授業の間の休み時間。クラスメイトの中では一番仲の良い宇佐木葵(うさぎあおい)に、俺は開口一番ノロけていた。
「まァいいよ、うさぎどんでもなんでも。で、何?オマエの子猫ちゃんが可愛すぎるって?そんなら早く俺にも紹介しろよ。幼なじみなんだろ」
「お前は絶対余計なこと言うからいやだ」
「俺は純粋なRIONファンだぞ!」
「なおさら紹介しない」
宇佐木は高二になってから同じクラスになった。第一印象は悪すぎたのだが、今では男が(というか理音だけ)好きだとカミングアウトできるほどの仲良しだ。
というか――
最初からバレてたんだけどな。
あれは2年になったばかりの頃の放課後。
理音が仕事だから、俺は教室で部活に行く準備をしていた。そしたら、コイツがいきなり俺に近づいてきたのだ。
宇佐木は少し髪が長くて金色に染めている上にピアスも空けていて、見るからに不良だった。地味な黒髪で短髪な俺とは絶対に気が合いそうにない風貌だ。身長は理音と同じくらいか、少し低いくらい。だから別に奴が怖いとかそういうのはなかった。
しかし、俺は近づいてくる宇佐木を警戒した。あまり仲良くない奴が声をかけてくるとき、そのほとんどが理音絡みのことだったりするのだ。それは相手が男でも女でも無条件にイラつく。
そして目の前に来た宇佐木は、ニッと笑いながら俺の耳元に口を寄せてこう言った。
『お前さ、ゲイだろ?』
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