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第28話
そんな奴と二か月でここまで仲良くなるなんて、あの時は思ってもみなかった。
宇佐木は話しやすいし話題も豊富だし、ウザくないし見目もいいし、勿論俺以外にはゲイなんて雰囲気は微塵も見せない。
しかし、理音がモデルのRIONだと教えた時は『マジ!?ちょっと俺ファンなんだけど!!』という反応だったので(同級生に興味が無さすぎて知らなかったらしい)、紹介しようと思ったが未だにしないでいる。
できないじゃなくて、しないんだ。
万が一、宇佐木が理音を好きになったら(ファンだから元々好きなんだろうけど)面倒くさいことになるからだ。
ちなみに宇佐木の好きな奴は保健室のおっさんらしい。悪趣味としか言い様がない。
あんなおっさんのどこがいいんだ?
ちゃんとしたらイイ男だと思えなくもないが、いつもだるそうで、無精ひげを生やしていて、休み時間のたびにタバコを吸わなきゃ生きていけないようなヘビースモーカーだ。
あんなのが好きな宇佐木が、綺麗で可愛くてカッコいい理音を好きになるとは到底思えないのだが、それでも可能性がまったくないとは言い切れない。
俺が心配性なわけじゃない、決して。
「なーわんこ」
「なんだ。つーかわんこって言うな」
「そろそろ限界なんじゃねーの?」
「何がだ?」
「……欲求不満っつーか、性欲だだ洩れだよ、お前」
「は!?」
宇佐木はにやにやと笑っている。
俺はどちらかというと普段は仏頂面で、理音にも『お前って何考えてるかわかんね』と言われるのに、なぜか宇佐木には考えてることがバレてしまうようだった。
「そらお前、チェリーの考えてることなんてわかりますよ」
「何で俺の言いたいことがわかった!?」
「今言っただろ」
ホントお前って仲良くなると残念な奴だよなァ、とけらけら笑いながら失礼なことをのたまう宇佐木。
どっちがだ。不良みたいな風貌なくせに、授業は真面目に出てて実は頭もいいとかなんなんだお前は、って感じだ。(金髪もピアスも、不良だからじゃなくてオシャレでしてるらしかった)
その時。
「きゃー!RIONだ!」
「どうしたの?犬塚くんに用事!?」
「犬塚くーん!RIONが来たよー!!」
女子の黄色い声の方を振り向くと、後方のドアのところに理音がポツンと立っていた。
「あーあ、さっさと俺を紹介しとけばよかったのにな」
「は?」
後ろで宇佐木が呟いたが、意味はよくわからなかった。
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