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第30話
「……なんだよそれ」
「ん?」
「なんで俺が誰だってきいてんのに、知らなくていいとか言うわけ?俺もお前にモデルの交遊関係教えるって言ったじゃねーかよ!ならお前だって教えてくれてもいいんじゃねえの!?」
「いやだって、アイツが理音に関わってもろくなことないだろうし」
イライラする。いや、ムカムカ?
どっちもだ。
「だから、なんでそれを昂平が決めるんだよ!!」
「な、何怒ってるんだ?理音」
昂平は本気で分からないって顔をしている。誰だって聞かれたんだから素直に教えればいいのに、このばか!なんで言いたくないんだよ!
「ハイハイ、ケンカしなーい」
金髪が俺たちの方へ来た。
なんだか余裕たっぷりに笑みを浮かべていて、それがまた俺の勘に触る。
「ったく、ヘンに意地張ってないでさくっと紹介してくれりゃいいのに。俺と関わってもろくなことないとか失礼極まりないし!まあその通りだけど。俺は宇佐木葵っていいまーす、いつもわんこにお世話に……いや、お世話してます、かな?よろしく理音くん」
馴れ馴れしく初対面の人間を下の名前で呼ぶなよ。
校内で俺を知ってるやつは大概RION、RIONと呼び捨てだから、コイツはまだ礼儀正しいほうだと言えるんだろうけど。
お世話してますとか何だよ?
何様?何気取り?
わんことか何?そのあだ名。俺でさえそんなあだ名で呼んだことないのに!
「そんなに睨まないでよ、俺は君のファンなんだからさ」
は?ファン?
ファンは男でも女でも有り難い存在だけど、コイツに言われても全然嬉しくない。
「ちょっと黙ってろうさぎどん。理音、何か借りに来たんじゃないのか?もうすぐチャイム鳴るぞ」
あ、そうだった。
てか今の何?うさぎどん?昔話かよ。
「……英語の辞書忘れた」
「ハイハイ、待ってろ」
チャイムが鳴った。
昂平が辞書を取りに行ってる間、俺は金髪――宇佐木と睨み合いをしていた。
奴はニコニコしながら俺を見てるだけだが、その余裕な態度がまたムカつく。
「犬塚ってさぁ」
「あ?」
「カッコいいよね?」
ホントに何様なんだよ。
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