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第31話
昂平に辞書を借りたあと、俺は急いで自分の教室に帰った。
先生は既に教室に来ていたので、遅れて入ってきた俺はちょっと怒られた。せっかく辞書を忘れたから(わざとじゃない、絶対にわざとじゃない)自分から昂平に会いに行けたのに、まさかこんな嫌な思いをさせられるなんて。
うさぎ、あおい。
マジでなんなんだ、あいつは!昂平がカッコいいとか目ぇおかしいんじゃねーか?眼科に行きやがれ!確かに昂平はカッコいいけど!
全体的に地味だけど、すっげえ至近距離でよーっく目を凝らして見たら「あれ?こいつもしかしてかっこいいんじゃね?」って思うような微妙なカッコよさなんだ。
パッと見だけじゃ絶対に分からない。身長だけは高いから、それだけで寄ってくる低身長肉食系女子もたまーにいるが。
でも、あいつのカッコよさを分かるのは俺だけでいいのに。女子だって分かってない奴が多いのに、なんであんな奴が!昂平はどっちかといえば男にモテるタイプだけど!
「猫田くん、さっきから当てられてるよー」
「え?わかりません!」
それでもまだ、女子ならいい、女子なら。だって昂平がモテても、すぐに一緒にいる俺のことを好きになるから。
わざとそう仕向けたりもしてんだけど。
「教科書を開きもせずにいい度胸だな、猫田…放課後ちょっと来い」
「いやです!」
「ホントにいい度胸だなおい」
これはあんまり当たることがない俺の勘だけど、今回は当たってる気がする。
あの宇佐木って野郎は、昂平のことが好きなんだ。
男のくせに、男の昂平のことを好きになるなんてマジでありえねぇ!きもちわりぃ!あ、俺はいいんだよ、昂平しか好きじゃないから。生粋のホモじゃねぇし。
「放課後来るのが嫌なら次のページの課題、明日全部お前に当てるからな」
「わかりました!」
俺はやっと顔を上げて先生の顔を見た。いきなり反応した俺に先生はギョッとしている。
いやいや、課題が好きなわけじゃねぇから。ただ、これで今夜昂平んちに行く口実ができたなーって思っただけだ!
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