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第32話
昼休みも、昂平はいつものように弁当を持って俺のクラスに来てくれた。
そういえば、俺と昂平が会うときってほぼ毎回昂平の方から会いに来てくれてる。そんな事実に、俺は今更ながら気付いた。
朝は部屋まで迎えに来てくれるし、昼休みはいつも俺のクラスで食べてるし、部活行けるときはわざわざ誘いにきてくれる。俺から昂平に会いに行くことはめったにない。
例外があるとすれば、今日みたいに忘れ物をした時だけ。だから今の今まで、宇佐木の存在を知らなかったんだ。
無言で俺の前に座り弁当を広げる昂平に、俺は話しかけた。
「あいつはいいのかよ、誘わなくて」
「あいつって?」
「宇佐木だよ、友達なんだろ。…つーかあいつと弁当食べたいとか思ってんなら別にわざわざ俺んとこ来なくていいし」
ああ、なんで俺っていつもこんなこと言ってしまうんだろう。
我ながらホントに可愛くない。
「あいつも昼休みは一緒に食べたい相手がいるんだよ。つうか俺があいつと昼食べたくない」
「なんで?仲良しなんだろ?」
「お前ほどじゃない」
「……………」
ばかやろー。
一瞬、泣きそうになったじゃねぇか。
「感動して泣きそうになった?」
「な、何言ってんだばか!!んなわけねぇだろ、自惚れんな!」
「ははっ、残念。ていうか理音は?他に一緒に飯食いたい奴はいないのか?俺だって、いつまでも俺と一緒に飯食ってもらわなくてもいいと思ってるけど」
「う」
そんなこと言うの、反則だ。
俺は言ってもいいけど、昂平は言ったらダメなんだ。他人が聞いたら理不尽だと思うだろけど、それが俺達の昔からのルール。
ワガママを言ったり機嫌を損ねたりしていいのは、俺だけなんだ。昂平はそんな俺をずっと甘やかしてくれたらいいんだ。
なんて、俺が勝手に俺の中だけで決めてるルールだけど。
「どうなんだ?」
「ふん、お前と食べたいっていうよりお前のおかずが目的なんだよ!ほら、今日もなんか交換しろ!」
「うちの母さんより美奈子さんのほうが料理上手だろう」
「んなことねぇよ」
俺が大きく口を開けると、昂平は卵焼きを箸で掴むと、そのまま俺の口のほうへと運ぶ。俺はそれを「んむ!」と食べる。箸が舌に当たった。
そこでいつも、間接キスだって思ってしまう。俺そうとう気持ち悪いな……。
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