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第36話
部活が終わって、久しぶりに理音と帰る。外はもう日が暮れ始めていた。
ぼーっとしていると、理音が俺に話しかけてきた。
「あのさー昂平、帰りお前んち寄っていい?」
「え?」
「明日までに英語の課題しなきゃいけなくて。お前、教えろよっ」
その上目遣いは無意識なんだろうか。
か わ い す ぎ だ ろ !!!
俺を殺す気なのか理音は。俺が死んだら大泣きするくせに、死んでほしいのか。
「どうせ授業中ぼーっとしてたんだろ。せっかく俺の辞書貸してやったのに」
「う、うるせーよっ、それとこれとは関係ないだろ!」
「どうせならシャワー浴びて、晩飯も食ってから来い。時間かかるだろうからな」
「わかった!じゃ、またあとでな」
「おう」
俺の家の前で、ひらひらと手を振って理音と別れた。ったく、理音は変わらないな。
可愛いとことか、可愛いとことか、あと可愛いとこ。
見かけはずいぶん綺麗になったけど、中身の話だ。理音は見た目も中身も可愛いんだ。
今夜母さんは夜勤だから、明日の午前中まで帰ってこない。でも、泊っていけ、とはさすがに言えなかった。
『お前、欲求不満オーラっつーか性欲ダダ漏れだぞ』
一晩一緒に過ごして、理音を襲わない自信がないから。
そして。
「来てやったぜ!」
「おう。……ん?何だその荷物」
理音は部屋着を着ていて、なぜか大荷物を持っていた。学校のカバンと、紙袋二つ。
「制服とカバンだよ。どーせお前ウチに起こしにくるから、一緒に起きて朝練行こうと思ってさ。それと、こっちはかーちゃんが夜食にしろっておやつ渡された」
「それはどうもご丁寧に」
俺はおやつの入った紙袋を受け取った。
え、つーか……泊るって言ったか?今。
「つってもただのスナック菓子だからな。俺はニキビできるのやだから食べねぇし、花音はガキのくせにダイエットするっつって食べねぇからウチじゃおやつが減らねぇんだよ。かーちゃんが食いたくて買ってくんだけど、自分だけ太るのは嫌だーつって結局食べねぇし。だからお前が食ってくれよ」
「ふうん、そういうことならいつでも処理係するぞ」
冷静に平静に振る舞ったが、俺の脳はプチパニックを起こしていた。
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