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第38話

それからの時間、 「そんでこの人が千歳くんって言って、ひとつ年上だけど俺の同期で」 「ああ、この人よくお前と一緒に写ってるよな。千歳シンジだっけ」 俺は試されていた。 「本物もすげーかっこいいんだぜ、くっそ脚長くってさぁ」 「でもお前の方が顔ちっちゃいしキレイだぞ」 「身内びいきするよな、昂平って」 精神力を。  いやだって、二人してベッドに寝転んで、雑誌を見つめてあーだこーだ言ってるシチュエーションだ。 顔だって超近くにあるし、時々脚も当たる。横を見れば至近距離に理音の顔がある。 ヤバイ。ホントにヤバい。  理音も少し様子がおかしくて、普段より早口だ。もしかしたら理音も俺を意識して緊張してるとか……? いやいや、都合のよすぎる妄想だな。重症なんだ、俺の頭が。 「で、この人が金子先輩、私服もすげーオシャレなの。こないだ誕生パーティーに呼んでくれてさ、んでこの頭悪そうな読モを狙ってんだって!そういえばナンパ成功したのかまだ聞いてねぇや」  楽しそうな声で話す理音。可愛すぎて言ってることはあまり頭に入ってこない。 ああ、今すぐキスして他の男を褒めるその口を塞いでしまいたい。 理音の赤い舌に俺の舌を絡めて、舐めて、吸って、グチャグチャのトロトロに溶かしたい。 「理音だってオシャレだ。この女よりお前の方が可愛いし」 「褒めてくれるのは嬉しいけどな、女の子より可愛いって素直に喜べねぇよ」  ぶう、とほっぺたをフグみたいに膨らませる理音。俺はそのほっぺを人差し指で突いて、中の空気を無理やり押し出してやる。 ぷす、と音を立てて空気を抜かれた理音は笑った。  あどけない理音の笑顔に、ヤらしい気持ちが少し和らぐのを感じた。理音は俺とキスしたいとか、そんなつもりは一切ないだろうに……最低か、俺は。 でも、もっと理音に触れたい。 触れたい――。 「そういえばさ、何で昂平は宇佐木を俺に紹介したくなかったんだよ」 「え」 蒸し返すのか、それ。 「どんなヤツなの?宇佐木って」 「興味あるのか?」 「だって昂平が俺以外と親しげに話してる姿見るのって珍しいから、どんなヤツなのかなって気になる」 「別に、普通にイイ奴だけど」  これだから紹介したくなかったのに。 理音はモデルをやり始めてから、オシャレとかそういうのにかなり敏感になった。 街を一緒に歩いてる時にオシャレな人を見たら、『今の人着こなしすっげーカッコイイ!何あのセンス!』とか、『あの服どこのブランドだろー?』とか、『あの着こなし真似したい!』とか、とにかく食い付きがすごいのだ。  俺にはよくわからないが、宇佐木を見たらきっと同じような反応をするんじゃないかって思ってた。……案の定だ。 「けど、何?なんで俺に紹介したくなかったのか答えになってないんだけど」 「……面白くないからだ」 「は?」 カッコ悪いけど、もう誤魔化せそうにない。 今回は理音の勝ちだ。 「友達を友達に紹介して、俺より仲良くなったら面白くないだろう」 「……ごめん、意味がわかんねぇ」 なんで分からないんだ…恥ずかしいから説明させるな。 「だから、理音と宇佐木が俺をほっといて仲良くなったら、俺が面白くないってコトだ」  でも、律儀に説明してしまう俺は、やっぱり理音には甘い。 理音は大きな目をぱちくりとまばたきを数回すると、眉をしかめて冷静にこう言った。 「……女子かよ?」 やっぱり突っ込まれた。 だから言いたくなかったのに。

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