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第40話

 普段は付けない灯りのせいで、仰向けで寝ている理音の顔がはっきりと見える。理音はあっという間に眠りの世界に落ちていった。俺が鼻をつまんでも起きないくらいに。 「……………」  俺は毎朝するように、理音の顔をじっと観察した。 白い肌、長い睫毛。形のいい鼻、唇。すぅすぅと呼吸をするたびに上下する胸。 綺麗だ。本当に理音は綺麗で、俺みたいなヤツが汚したらいけない。 ――汚せない。 「理音」 手を伸ばせば、簡単に抱きしめられる距離。 「りおん」 こんなに近くにいるのに、 「理音……」 俺達の距離は、途方もなく遠い。 「んぅ……コーヘイ……」 「……理音?」 寝言みたいだ。 夢に俺が出てきてるんだったら嬉しい。 「寒い……」 「……もっとこっち来い」 「ん……」  寝言で、無意識に発言してるんだって分かってる。それでも俺が肩を抱いたら、理音は俺にくっついてきた。俺の胸の中に、頭がぴったり納まるように。 「理音……」 「あったかい……こーへい……」 「好きだ」 好きだ……。  胸の中にいる理音に、聞こえないくらい小さな声で、俺は告白をした。ぎゅっと抱きしめて、小さな頭にチュっと触れるだけのキスをする。 これが、今の俺の精一杯。 少しだけ抱き返された力に満足して、俺も目を閉じた。

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